January 23, 2008

カラマツストーブと間伐、感じたこと。そして上雪。

朝から雪。久しぶりに冬の信州らしい景色だ。
でも上雪といって、普通は春先の3月とかになると南信の方がたくさん雪が降るみたいなんだけど、
それがいちばん寒いこの時期に来るっていうのがやっぱりおかしい。

大町のカラマツストーブを使っているお宅に薪を届けるというので、
普及組合の清水さん、山田さん、木こりのりょうくんに同行。
久しぶりに長靴持っておでかけ。

大町のお宅でカラマツストーブに着火するところを見せてもらったが、
すごく、早い!火をくべて、ものの数分でかなり火の勢いが安定して、
部屋がすぐ暖まる。
従来の薪ストーブに較べても着火が容易で効率がよいということ。

カラマツストーブはその熱効率のよさとか、CO2の削減とか、灯油を使わないこととか、
昨今のニーズによくマッチしているので、製品としてもわかりやすく魅力的だが、
バックボーンの理念としてあるのはあくまで間伐材の利用を促進して、
よりよい山づくりをしていくということ。

それには、間伐をする林業の人、それから薪としての安定供給、
それからストーブのユーザーというネットワークを構築していく必要がある。
だから、ストーブの製造・販売だけでなく、そのネットワーク、システムの整備が今後の課題だ。

うまく循環するようになれば、間伐が進み、林業の担い手が必要となり、それにもっと
若い人の力が必要とされるだろう。

                ・・・・・・

まわりの木こりくんたちを見たり、自分がシャロムに行ったりして思うんだけど、
1次産業って今の若い人が求めてるものに案外にぴったりくるんだろうなって思う。

そりゃあたしかに便利な世の中に育ってるし、随分甘やかされて育ってるから、
めんどくさいなあ、という感じでもあるかもしれない。

でも消費・消費の先のむなしさみたいのにはみんなそろそろ気がつき始めているし、
自分のお金や時間の使い方にもシビアになってきた世代だ。

でも大体の人がなんか違う、これでいいのかなって思いながら手をこまねいてたりとかするなかで、
木こりや畑をやってる友だちは生き生きしている人が多くてすてき。
(ハッピーそうだが、でもそういう選択をしてきているきっかけには、何かつらいこととか
苦しいこととかがあったり、そうでなくとも真摯に悩んできた経緯なんかが
あったりもするんだけど、けして力が入りすぎてもなくてにこにこしたいい感じの人が多い)

自然の本来のあり方に人間が手を加えてきたものをどうしていったらよいのか?
自然に学び、その土地に昔からある暮らしに学び、年寄りに学び、
それから自分たちの体と頭を使って、今ここで自分にできることを楽しみながら
やってみること。これがよろこびでなくてなんだろうって思う。
自分の人生のポテンシャルを満たす…何をするかがだいじなんじゃなくて、
どうやるのか、がだいじなんだと思う。

                ・・・・・・

どうして間伐が必要なのかと聞かれることがわりに多かったので、
(私もつい最近まで知らなかったんだけど)興味のある人のために今の自分が
知っていることに触れておきます。
(りょうくん、kozoくん、間違ってたらフォロー、追記お願いします)

戦後のモノがない時代に、成長の早い針葉樹の植林が日本全国各地で行われた。
よってこれらの人工林は樹齢50-60年ものが殆ど。ただ、戦後経済が発展してゆく過程で
建材としてコンクリートなどが主体になり、また木材としてはより廉価な外国産の木材を輸入して使用するようになったため、国内の林業は廃れ、現在に至るまで木材の使用が十分にされてこなかった。

よって、戦後植えた人工針葉樹林が現在では過密状態にあり、
日光が十分に当たらなかったり条件がよくなく、材となるべき樹木の発育が十分でない。

また、針葉樹の間伐を行い、広葉樹の比重を増やしてやることで、本来の里山のバランスを取り戻す必要がある。災害に強い土地づくり(広葉樹の方が保水能力に優れているので)、本来の自然の姿である豊かな里山づくり(落葉による豊かな土壌の再生、水源確保・浄化、熊・猪・鹿・猿などが生息している山に食べるもの(=木の実)がなく、里に下りてくることによる農作物・人的被害などのの軽減、などなど)

→唐松をはじめとした針葉樹の間伐がもっと必要。
→間伐を促進するために、木材としての利用方法の間口を広げてあげる必要がある。

                ・・・・・・

今日もうひとつ感じたこととしては、その土地土地に見合ったやり方があったり、
個人のライフスタイルによって、より多くの選択肢があるということは非常にだいじだということ。

今日もペレットストーブだとか、いろいろな話が出ていたが、
多様な選択肢があることで、裾野が広がる。
どのやり方にもいい面と悪い面があるが、自分に無理のない形でまずは取り入れていくという
ことはとても大切だと思う。よく、ゴミ問題なんかに顕著だけど、悪い面だけを取り上げて、
極論としては何もやらない、みたいに居直る(?)政治家があまりに多い(マスコミも悪い)が、
トータルバランスで少しでもいいほうへ行けばいいんじゃないのかな。
だから、裾野が広がることが環境問題の解決にはとても大切だ。

諏訪地方でのカラマツストーブの利用は、システムがうまく稼動すればとても
理に適ったものと言えそうだ。このへんの学校では個々に学有林を保持しているので、
学校にカラマツストーブを導入して、学有林で児童たちが間伐のイロハを学んで
薪割りを自分たちで実際にやってみるなんて教育も実現したらどんなにかいいだろう。

針葉樹の人工樹林の問題は日本全国あちこちに見られる問題なので、
ある程度の汎用性があると思う。
ただ、この方法がいいと信じることで他の可能性を否定したりすることのないよう、
広い視野を持つことがだいじだな~、と改めて感じた次第。

いくら従来のものに比べて煙が少ないとはいえ、都市部の住宅密集地で
薪ストーブとかいうのは現実的には難しいだろう。薪の調達にもエネルギーが余分にかかるので
かえって負荷が大きくなるかもしれない。薪を置く場所を確保することもままならないかもしれないし、
持ち家でない人にはストーブ自体の設置も障害がたくさん。

いろんなライフスタイルがある現代だからこそ、その土地や自分のライフスタイルにあった
やり方が選べるような多様性とか選択肢の幅ってだいじだ。情報をやり取りするツールが
これだけ発達してるんだから、その知恵を分け合うことも。

これって、人間についても言えるかな…自分の価値観や、あるひとつのコミュニティで
持っている価値観に固執して、他を批判することではなく、
他をも認めたり、必要な部分は歩み寄ったりすることで、全体としての可能性は広がるということ。
もちろん、ほんとうにだいじな部分では絶対に譲らないということもだいじだが、
もっとすばらしいのは、一見めちゃくちゃに見えても、宇宙は大きく、あれもこれも飲み込んでくれる。
だから恐がる必要はない、一歩踏み出しさえすればいいじゃん。と思う。

                ・・・・・・

私はメーカーで営業の仕事をしていて、やっぱり土に還らないもの、持続可能性がないものを
一生懸命に売らなきゃいけない、そのことがけっこうしんどかったし、
それがまた飽くなきサイクルでゴミを生み出している、という感じもけっこう苦しかった。

もちろん仕事を通じて多くを学んだしいろいろな経験ができてよかったが、
いつでも忙しすぎたりくたびれてたりして家族や友人との時間が思うように取れないことや、
純粋に自分自身のためだけに与える筈の自由な時間さえもちゃんと持つことができなくて、
いろいろ考えた末、これは自分の人生の中でこんなにがんばって私がやることじゃないよな…
自分の人生にどれだけ確かなものを遺せるかなんてわからないんだけど、
少なくとも、この仕事をするために私生まれてきたわけじゃないよなー。と
思ったら、いっきに辞める決心がついた。それは自分でも驚くくらいに強い強い気持ちで。
何かが自分のなかでバーンと変わった感じがして、見晴らしがよくなったっていう気がして
すごく気持ちがよかったし、わくわくした。そういう感じは今も続いていている。
ラッキー、ありがと!縁だとか、時流だとか、すべてのものに!

カラマツストーブ…今の自分には、こういうものに関わるほうがずっといいのだろう。
プロジェクトが量産に入って新しい商品をグローバルな市場に送り出すことも
なんだかワクワクしたものだけど、自分がゴミ…とかそういう感じを持ってる限りは
後ろめたさがあったものだし、前に進んでいるというよりは後に進んでいるというか
(そこまで言わなくてもいいけど)限界はあるよなあ、というのが素直に感じたこと。

ただ、私が会社に勤めているときに仕事で出会った人たちの何人かは
この日記を読んでいる人もいるけれど、私はけして彼らに仕事をやめて欲しいとも
思ってないし、プロフェッショナルな彼らを尊敬もしているし、要は私は自分自身の
問いに対して自分で導き出した答えを生きようと思っている、それだけのことだ。
彼らととりわけにつき合いを絶つつもりもないし、彼らから学ぶことはたくさんあると思ってる。

営業の仕事って、本来、たくさんの人に会うことができて、コミュニケートすることで
新しい可能性を生むことのできる、すごい仕事だ。そのプロセスも決まったものはないから
その営業マン独自の秘訣とかノウハウとかはあるにせよ、それが誰にもあてはまるわけでも
ないし、自分のやり方を見つけていく過程というのはすごくおもしろい。
それから、最新テクノロジーの恩恵もたっぷり、毎日受けてます。技術者さん、ありがとう!

                ・・・・・・

さて、今日はキャンベルの「ジョーセフ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である。」
を久しぶりに読んでいる。対談なので語り口がライトでコンパクトなんだけど、
真摯に人生を生きようとする人へのキャンベルの暖かさやメッセージみたいなものが
強く出ていて勇気づけられる気がします。読んでて楽しいっていうか。
(しかし、すごい魂胆の邦題だな…書店で、恋愛指南本とかの並んでるところにフツーに
置いてありそうだ…原題は「An Open Life」)

投稿者 chaco : January 23, 2008 12:00 AM
コメント

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