夕方、小淵沢に映画「チベット・チベット」を見に行く。
在日三世の金森太郎さんが、祖国韓国を皮切りに旅をするなかで、
モンゴルのチベット族の民家でダライラマの写真を目にしてから、
在日の自分の立場に、他国で暮らすチベット人を重ね合わせ
興味を覚え、インドで実際にダライラマに接見し10日間行動をともにし、
はてはチベットを訪れる…
その過程を、実際に自分が撮ったその時の映像を繋ぎ、
自らのナレーションで綴るという作品。
数々のチベット人との対話やインタビューも盛り込まれているが、
中国政府によるチベット支配の現実、凄まじい暴力や拷問の事実、
拷問により親を亡くし、また教育を受けることのできないチベット人の
子ども達、また国境警備の監視の目を潜って命懸けで亡命する
チベットの人達の現実を知ることができる。
自分の祖国や囲まれて育った文化・宗教を愛し、
家族であたりまえの生活を送ることすら
暴力を以って阻まれているチベットの人達。
亡命したばかりのチベットの人達にダライラマが語るシーンで
「チベットは生きている。今はじっと堪え、あなたたちができることは学ぶこと」
「中国人だ、チベット人だと区別をすることはない。私たちは皆同じ人間だ。
中庸の精神が必要です」
とおっしゃっていた。
亡命するときは徒歩でヒマラヤ越えをしなければならず、国境警備隊の監視を
避けて6晩もの夜を歩くという。なかには凍傷にかかり身体を切断する人達も
いるということ。
ネパールを経由してインドへ辿り着いた人たちに、ダライラマは続けて
優しく語りかける。
「ここには充分な医療が用意されている。まずは安心して身体を休めてなさい。
果物を食べるときは腐っていないかどうかよく確認してから食べなさい。
寒いチベットと違い、ここインドは暑い国です」
泣きながらダライラマの話を聞く人達も多く、胸を打たれるシーンだった。
そこには慈悲深く誠実で立派な指導者の姿があった。
社会的な活動を起こすかどうかは個々の判断に委ねられるべき領域だけれど、
オリンピックと政治が切っても切れない関係である以上、
圧倒的な暴力で故郷を奪われた人達がいることをなかったことにして、
このスポーツの祭典をただ楽しむことはできないと思う。
映画中で、亡命してきたチベット人を受け入れる施設の看護士さんが
「援助よりもこの現実を世界の人に知って欲しい」
また亡命したが拷問の後遺症で生きていくのもやっとというチベット人の
女性が号泣しながら
「私にできることはこうやって外国の人に真実を伝えること」
と言っていた。
愛する故郷の悲しむべき状況を変えたいと思う、
その心はあたりまえのことだと思う。
オリンピックを利用して扇動するなんてことではない。
日本人がかつて韓国の人達にしてきたことを、真実として学校で教えなかったよ
うに、中国もこの真実をねじまげ、隠しているが、今やネットやこういった映画
で情報を得ることができる時代だ。
みんなができるだけ情報を収集して考えるべき問題だと感じる。
その意味で今回の緊急上映はたいへん意義深いものだし行ってよかった。
来週土曜日の長野市での聖火リレー、中国への抗議行動として、
デモではなく(多分抗議のプラカードか何かを持ちながら)黙って
聖火リレーを見守るグループがあるそうです。
平和的解決を望むチベットに寄り添うような抗議の仕方だと感じる。
下記に、藤原新也氏のトーク&ダイアリーのリンク貼っておきます。
http://www.fujiwarashinya.com/talk/index.php