突然アレルギーで鼻ぐしゅぐしゅ。
しかたがないのでティッシュとマスクを買いあやしいいでたちだが、旅は続く。
焼酎の蔵で芋焼酎の作り方を説明してもらったり、
お昼に”屋久然料理”をいただいたりする。
品数は多いがすべてほんもので、もたれずおいしかった。新鮮なとびうおの刺身や
ハオラマとかいう土地の野草のおひたしが目にも美しくしゃきっとしていておいしかった。
焼酎は忙しいなか時間を割いて、実際に蔵のなかを歩いて説明してくれるのだが、
説明が終わると自社製品のPRも販売も試飲もなしにさっと見送ってくれるので、
そのあまりの商売っ気のなさに拍子抜けしたほど。しかも見学は無料なのだ。
じーん。本坊酒蔵、すばらしいです。
(というわけで、夜居酒屋で注文して呑んでみました、まっすぐした味のいい焼酎です)
今日は一日曇り空でときどき雨が降る。
ここ何日か、もはや雨でも晴れでもどちらでもよいなと心から思う。
計画をきっちりたてるとどうしても天候に左右されて思い通りにいかなかったり
忙しくなったりするが、雨が降ったら降ったなりの過ごし方だし、
また島のあっち側とこっち側でまるっきり天候や気温が違ったりするのもおもしろく思う。
でも明後日には帰るので、フェリーが出なかったら困るねとこっちに来て初めて
宿のテレビをつけて天気予報をチェックした。曇りみたい、ほっ。
午後はなんとなく白川のお茶屋さんを訪ねてみたり、
ゆるーいガジュマル園を見てまわったり、
それから樹林に行って、おいしいコーヒーをいただきながら奥さんとおしゃべりしたりする。
夕方はまた楠川温泉でほっこり。『楠川温泉=痔に効く』と
四国旅行に行ったときに乗った飛行機の機内誌で紹介されていたと、
地元の人が笑いながら教えてくれた。痔ってな…。
驚くほど小さいがのんびりしていていい温泉だ。
屋久島に正直あまり興味はなかったのだけど、今はほんとうにきてよかったなあと思う。
縄文杉も白谷雲水峡にも行っていない私たちだが、そのぶん無意味に里をぐるぐるしたりして、
素朴で欲のない島の人たちに触れ、どこにいってもポンカンを持たされ、自然に浸り、
楽しく過ごしている。四季を見てもみたくなった。また機会があれば訪れたいなあと思う。
同行のともよさんは若かりし頃は沢登りもがんがんにしたくらい山で鍛えているので
60代半ば過ぎの今でもがんばれば今でも縄文杉くらいは行けるだろう。
でも屋久島に来る前に、テレビで屋久島の紹介をしていて、
縄文杉に訪れる人のし尿を、処理するために島の人が担いで里へ運んでいる
シーンを見て、「それ見てねえ、いやだわ。私そこまでして縄文杉に
登らなくてもいいわよ」ってきっぱり言った。
うつくしい心のあり方…
この人と旅ができてうれしく思う。
樹林の奥さんと「お礼肥やし」の話などするが、屋久島って
みんなそういうことよく言うの、身についてるんだなと思う。
尾之間の農家さんが「いただいたら、お礼に肥やしやってさ」って
暑くもないのに汗かきながらにこにこしてまだ早いタンカンを選んでは
私たちのために収穫しながら、話してくれた。
屋久島では、木を切るときも、1本切ったら2本は植えるとか、そういうしきたりが
あるそうです。すてき。
夜は宿でやってる居酒屋に顔を出したら、二日連続で近所の自然食品屋のおっちゃんと
出くわしてしまった。昨日と今日でそれぞれ違う店なのに、奇妙な偶然だ。
ここのおっちゃんの店で種子島のほんものの美味しい黒糖を売ってくれるのだが、
おっちゃんが「また明日店に寄りなさい、いいものが手に入ったからわけてあげる」というので
何かと思ったら、帰り際にポンカンだと判明。
車のなかはすでに行く先々で人々がにこにこして持たせてくれるポンカンでいっぱい。
その確率というと長野の林檎の旬以上。
人の出会いそれぞれに思い出のあるポンカンなので、しみじみ味わうが、
食べればまた来る、それが屋久島ポンカン…。