台湾には坐月子(ツオユエズ)という、産後1ヶ月までいわゆる床上げをせず
横になる風習があって、人にもよるが、聞くとみんな結構これを守ってる。
その1ヶ月はトイレに行く以外は基本的にはベッドの中で横になって過ごし、家事はしない。
目も使わないほうがいいので、本やパソコンや携帯メールも基本はやらないほうがいいとか。
あと、水を使うのはよくないとされていて、髪を1ヶ月洗わないとか。
それに月子餐という独特な産後の養生食があり、毎日漢方を煮出したものや、
毎食の豚レバー、鶏レバー、鶏肉、鵜骨鶏などを米酒と生姜と胡麻油で煮込んだスープ、
など、台湾人でも食べつけないと言われる食事の数々。
日本では母乳のためには油を控えて粗食がよいとよく言われるけど、
ここでは母体の回復にいいといわれる食事をとるのが基本で、
母乳にいい食事ってのはあまり考慮されてない(というか、こういう食事を
してれば母乳も出る筈と思われてるような節も…?)
台湾人は坐月子があるので更年期障害が少ないらしい。
これは恐らく道理に適っていて、野口晴哉の「女である時期」という本にも
出産のときに開いた骨盤は、産後3週間をかけてゆっくりと閉じるのだそう。
この時期に横になって休むと骨盤が歪まずきれいに閉じるので、更年期障害などの
トラブルが後年起こりづらいということ。
なるほどねー、と思ったので、私は1ヶ月はこちらの風習に従って床上げしないのは
やってみようかな、と思っている(というか、義祖母・義母と夫がさせてくれなそう…)が、
問題は食事で、いやーこれ”受不了”(我慢できない)だろうなと思うのだ。
ここのところ食卓に麻油鶏(鶏肉の煮込みスープ、米酒・生姜・胡麻油タップリのスープ)が
並ぶと、「吃吃看(食べてみろ)」と私の顔をみんなで覗き込む。
実際問題、私はこの味があまり得意でなく、進んで食べたいものではない。
一口でもう結構と思う。
夫は日本人は食べつけないものもあるから、無理強いしないことと義母にも伝えてくれてあるが、
義祖母の手前もあり、まあできる限り食べてみて、ということのよう。
1ヶ月寝起きしないということは、当然食事も人の手を借りないといけないわけで、
夫実家では恐らく、やっぱり坐月子に食べるのがよい、とされる食べ物を用意してくれるだろうが、
恐らく私にとっては拷問に近い。でもこれが食べたい、といろいろリクエストするのも
申し訳ない。
義母にしても日本人が産後何を食べるかって全然わからないので、
どんなものを用意したらいいかと困惑している様子。
家族で話し合った結果、実家の母に尋ねたら「ちょうど3月で退職だから、台湾行ってもいいよ」
と快く引き受けてくれたので、みんなほっとして、お願いすることにした。
こんな背景もあって余計に…切迫早産のときはみんなして
「3月16日にあんたの婆ちゃんが日本から来るから、それまでお腹の中にいるんだよ」などと
お腹の人に向かって話しかけていた。
まあ、37週になった今となっては、私もう早かろうとなんだろうと、
豆さんの好きなときに出てきたらいいよと(待ち遠しいというのもあるのだけど)
内心思っているのだが、義母などは変わらずビシッと「待ってなさいよ!」と言い聞かせているので、
こんなにビシッと言われたら恐らくそれまで出てこないだろうなあ、とおかしく思っている。
ちなみに、台湾人でも食べつけないと言われる月子餐、笑えるのが、
産後1ヶ月で夫が急速に太るってのが台湾ではよくあって、似たような状況で
家の者が用意した麻油鶏など、奥さんが食べないので夫が代わりに食べて太るというもの。
で、多分食べてます、なんて言ってやり過ごすんだろうなあ。
多分、うちも似たような感じかしら。
(実家の母が来てるんで、恐らく全部が全部はないけど、それでも麻油鶏、漢方の煮たのは
義祖母の手前もあり、用意がされると思われ…漢方はトライしてもいいけど、
麻油鶏にお願いだろうなと思う)
ちなみに、誰が赤ちゃんの世話をするかっていうと、これもやっぱり家の人にお任せするみたいです。
といっても寝ている間はずっと横にいさせればいいし、母乳も自分であげられるし、
おむつくらいはきっと座ったまま替えられるし、お願いするのはお風呂くらいかなあと思う。
で、台湾のお母さんは1ヶ月そうして横になって十分に回復して、
2ヶ月目からフルに家事と子育てを始めるようです。
(3ヶ月目には仕事復帰するわけだけども)
これだと夫も否応なしに手伝わざるを得ないからすごくいいなあと思う私。
私も助かるけど、家族みんなに手をかけられる子どもが幸せと思う。
最初は母親である自分が思ったようにみれないということに抵抗のあった私だけれども、
夫が「子どもはマリだけの子どもじゃないでしょう、家族みんなの子どもだよ」とよく言っていて、
何度も話し合いを持ちながら、また職場で子育てしながら働いている同僚や上司の
意見も聞いたりしつつ、今はメリットのほうが多いなあと感じている。
心配もそれはたくさんあるし、これはやめてほしいなあ、と思うことも正直あるけれども、
夫や夫家族との考え方の違いも文化や風習の違いがあれば尚のこと、
同じ日本人同士でも意見が異なることだってままあるんだから、
あまり深刻に考えずひとつひとつ対処していけばいいかなあと思う。
子どもが愛情を注がれて元気に育つことが何より大切だから、お母さんもどーんと
構えて笑ってられるようだといいなと、心のなかひしりと、思っている。