江戸川沿いのサイクリングロードは土手の上を走っているため、
河川敷を箱庭のように見下ろす格好になる。
それに比べ、
荒川のサイクリングロードは
土手の下、河川敷を水平線の高さで走っている。
草野球、草サッカー、
いくつもの試合が次から次へと目の前を通り過ぎていく。
中盤で競り勝ったボールを受取りシュートするがゴールを外した選手。
リトルリーグの少年を本気で叱っている監督。
試合を応援するようでもあり、手持ちぶさたのようでもあり、
何かを待ちながら、草むらにしゃがんで選手を眺めている女たち。
彼らが当事者だとすれば、
通り過ぎるだけの自転車は、傍観者になる。
走っても走っても、
また草野球のチームが現われる。
大都会に住む無数の人たちが、
日曜日を求めて河川敷にやってくる。
それはとても幸せな景色。
小江戸と呼ばれる蔵の町まで走り、
空が黄色くなる頃、また河川敷を戻ってきた。
すべてのグラウンドは
もう試合を終えていて、
ひとりで球を蹴りつづける痩せた青年の影と、
草むらでトランプをつづける四人の男女と、
ユニフォームを脱ぐ男たちを眺めながら
相変わらず手持ちぶさたな女たちが残されていた。