2005年06月21日

陽が傾いてきたので起き上がると、
少し夕方の風が吹きはじめていた。

一時間くらいは寝たらしい。

与儀公園の石垣の上は、
僕の身体の跡だけがまだ昼の熱気を保っていた。

粗めの砂利で造られた感触を指で確認する。
汗の跡なのかじっとりと黒ずんでいる。
頬を撫でると手のひらから砂が払い落ちた。

空気がうっすらと紫色を帯びてきた
と思っていたら、
公園の蚊が次々とやってくるようになった。

向かいの神原小学校にはもう誰もいないようだ。

ひめゆり通りを急ぐ自動車の音が
やけに騒々しい。

べとついたシャツに風を入れ、
ぎくしゃくした身体で
また歩きはじめることにする。

夕闇と排気ガスに追い立てられるように
あても無くガードレールの内側を往く。

開南のバス停では、
坂道に沿って人間が坂のように並んでいる。
みんな自分の生活のことで頭が一杯で、
僕のことには誰も気付かなかった。

市場の裏では、吠え立てる犬。

青いプラスチックのゴミ箱。

見上げれば、アーケード入口の錆びた赤い文字と、暗い天井。

洞窟のような商店街を抜けると、
空は蒼く夜だった。

街の光のにじみ具合が
なんだかいつもと違う気がして
ふらふらとA&Wに入っていった。

冷房と蛍光灯に眼の奥できーんと音が鳴った。
店員の黄色い声が遠くから聞こえてくる。

席に座ると
窓の外には夜の街が流れている。
店内のやけに黄色い光との対比が、
なにかの映画を思い出させた。

そしてルートビアを一口飲んで
思い出した。

この店は、何年も前に瓦礫にされて
今はもう無かったはずだということを

投稿者 vacant : 2005年06月21日 21:28 | トラックバック
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