2005年07月01日

頭の中には、1曲。

鳴りつづけている。今も。

急に駆けだすと、音が飛んで、また途中から。

陽射しが烈しい分、日を遮られた路地は、くっきりと黒い。

石の壁に挟まれて、ひんやりと何かの匂いがする。

小刻みに爪の音を響かせて、黒い犬が出かけていくのが見えた。

さっきから古い教会の塔が、片面を光に焼かれて、ずっと頭を出しているのだが、

どう登ればそこまで辿り着けるのかが、解らない。

どこにも人間がいないので、動悸が速くなる。

Joao Gilberto「三月の水」の3曲目に突然、

歌のない「靴屋の坂道で」という曲が入っている。

行き止まりにならない路地を見つけ、

調子づき坂を登っていく。

塔の裏側は狭い広場になっていて、

禿げ上がった、楕円球の頭の男がたったひとり、小枝を手に

黒くてらてらした肌の犬をしつけていた。

小さな胴体に小さな足を付けたような女児が、

バトンを振り回して遊んでいた。

投稿者 vacant : 2005年07月01日 15:34 | トラックバック
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