夜、通りの灯りが、にじむようになった。
春が来た。
春宵、という言葉が好きだ。
通された座敷。
集まった面々。
顔は見知った人、人、人。だが、
その九割は、名字も名前も実は知らない。
それでも、数ヶ月ぶりに何事も無かったように言葉を交わし、
初めて出会う男とも、酒を酌み交わす。
その語らいの時を、かけがえなく思った。