2006年08月17日

清少納言風に言えば、

「夏は、夜。」

であり、

かつ

「夏の夜」は、「知らない駅」。

ということになるのだろうか。

夜になって

降りてきた

湿気のせいか、

がらんとしたホームに

心もとない

黄色い蛍光灯は、

いくつ灯しても

なんだか青白く

明るさが足りなくて

ものの輪郭は

かげろうのように、じんわりとしている。

向かいの

ホームのコンクリートは、

現像液から途中で引き揚げた

8×10のよう。

さっき歩いてきた駅前は

公団の立ち並ぶ人工の島。

おもちゃのような商店街に

飾りのついた街灯が

映画のセットに見えた。

その下を、本物の人々が

歩いている。

8月14日、月曜日。

昼間は、ことし唯一の、入道雲を見た。


こんな夜の駅に

特別な感情を持ってしまうのは

むかし、夏にこんな

じめじめとした静寂のなかで

なんども一夜を過ごしたから。


ここがどこかもよく知らないけれど、

きょうはここからもう何処にも往かない。

電車が滑り込んでくるのを

がらんどうのホームで待っている。


数時間後、

DVDで市川準の『トニー滝谷』(GNBD-1051 JAN:4988102122034)を見た。

投稿者 vacant : 2006年08月17日 23:18 | トラックバック
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