10月7日(土)
タカイシイギャラリー
にて
シルケ・オットー・ナップ 個展
「Standing anywhere in the space in a relaxed position」
が良かった。
カンバス一面に
灰色のような銀色、
あるいは金色の
もやのような
ベールのような
紗幕のような
何かが
薄く塗られている。
そのむこうに
バレエのポジションをとる人物たちの
身体がある。
夢の中の
記憶から消された部分。
正確に言うと
夢の中の
記憶に定着しなかった部分。
あるいは、
未明か
薄暮のなかの
あいまいな記憶。
眠りからさめても、
脳からこびりついて取れない霞(かすみ)。
目を醒ましたいのに
どうしてもそれができない
自己の身体の、
「非」自由性。
そんな靄(もや)のむこうにみえるのは
舞台の上の人物、
人工的な空間の上の
人工的なポーズ。
何かを暗喩している夢のよう。
抽象的な
概念的な夢のよう。
ここは
舞台のうえだが
舞台は見えない。
身体には顔が無く、
ただ、身体がある。
身体(ボディ)。
社会生活という
ぶ厚い洋服に隠されて、
ふだんは
性的だとは認識されていないもの。
そんな
ふだんは意識しない
性的なものを
深海で生物をみつけるように
無意識の夢の中で見つけ
そしてまた
それは
記憶から抹消されていく。
タカイシイギャラリーの紹介文によれば
「彼自身の撮影した写真や既存の写真を基に、キャンバスに水彩絵具のみで描くという独特の手法で描かれています。密に層化された半透明のイメージを描くために、オットー・ナップは、水彩絵具を吸収しないキャンバスの欠点を利用しました。絵画に対する手法それ自体が、描かれた題材の空虚性に言及しているのです。 精密に造られたイギリスの庭園や、過去作品「ラス・ヴェガス・ストリップ」に描かれたカジノのショーガールやパフォーマンス風景などのイメージを描くことにより、オットー・ナップは、「人工的な内部空間」に焦点を当てた制作を続けています。」
とのこと。
私は、
Tortoise(トータス)のアルバム
『TNT』(Thrill Jockey THRILL-JP 13 HEADZ-22)
を想い出していた。
夢のなかの
無声映画の
サウンドトラック、
というような意味のことを言っていた人がいた。
たしか、そんな気がする。
これもまた、
霞(かすみ)のむこうの
あいまいな記憶。
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