11月4日(土)
森美術館
ビル・ヴィオラ展 「はつゆめ」
(2006年10月14日 〜 2007年01月08日)
■ビデオアートは、絵画になった。
ビル・ヴィオラのことは知らなかった。
縦横の比率が、カンバスを彷彿とさせるカタチのフレーム。
その中に描かれた、超HS(ハイスピード)撮影された
スローモーション映像。
彩度の高い鮮やかな発色や、レンブラント(?)の時代のようなライティング。
ビル・ヴィオラによって、
ビデオアートは、タブローになった。
なかでも、印象深かった作品は
『グリーティング/あいさつ』(1995年)だ。
題材は
3人の女の、井戸端会議。
それぞれ赤・青・黄色をベースにした衣を着ている。
背景は、舞台背景のような、
中世の宗教画の街角(?)のような、キリコの絵の町のような。
無国籍というコトバがあるように、
無時代というコトバがあるなら、そういう狙いのディテールだ。
超スローモーションによって、はっきりと見えてくる
3人の女のあいだの
視線の動き、表情のわずかな翳り、戸惑い、気遣い。
ご近所の3人女の出会いは、
なんの結論も出さずに終わっていく。
(展覧会目録も、この無目的な映像のシュールさに、半ばあきれ口調だったのが、ちょっとウケた。
45秒の映像を、10分にして見せているとのこと。)
・・
たとえば
われわれが
西洋の写実絵画を見るとき、
(仮に、クールベの『こんにちは、クールベさん』だとしよう。)
その絵の前後に流れた時間を
知らず知らずのうちに想像している。
ビル・ヴィオラの作品『グリーティング/あいさつ』は、
そんな、
いままでわれわれが
想像によって、頭の中で見ていた映像(=絵画の前後)を
タブローに描いて見せた
画期的でショッキングな作品だ
と思った。
HS映像によって、映像が絵画になるなんて、
なんてシンプルなアイデア!!
誰でも思いつきそうで、それでも誰も試さなかったビッグアイデアをカタチにした
ビル・ヴィオラに、
畏敬の念を捧げます。
・・
展覧会のクライマックスは、
『ミレニアムの5天使』(2001年)。
巨大な、5作品の連作。
ちょっと前に、
資生堂(シセイドウメン)のコマーシャルで
「心は、自由か。顔は、どうだ。 SHISEIDO MEN」という広告があった。
中田英寿や野村萬斎が登場するCMだったが、
あれは、ビル・ヴィオラの
パ○○だったことを
この展覧会に教えてもらった。
いや、強烈な影響下にある、とでもいうべきか。
投稿者 vacant : 2006年11月28日 23:12 | トラックバック