ゆえあって、
安部譲二さんのブログを読み
そのおもしろさにやられてしまったので、
ここで紹介する。
毎回毎回、
うならされるのだが、
2つほど、引用させていただく。
「年寄りは三回続けてショックを受けると、老人性の欝病の発作で、堪らず自殺してしまうのを俺は多年の経験でよく知っている。
遺族が、「自殺なんてそんなこと、旅行に行く飛行機の予約も、宿の手配も済ましておりましたのに……」なんて言うケースだ。
旅行の約束を反故にして、死んでしまうような男ではないと、遺族は涙ながらに語るのだが、俺はそんな衝動が痛いほど分かる。
まず若くて綺麗な娘に、最初から爺い扱いされてかなり落ち込み、忌々しい想いをさせられて、次に打ち合わせか会議で、自分が熱心に喋ったことがろくに聴いてもらえず、そして最後に僅か四合呑んだだけなのに、蹴躓いて不様に転ぶと、俺たち爺いは生きていたくなくなる。
こんな想いをするのは、もう嫌だと思うんだ。」
(第43回 『生しらすと静ごころ』より引用)
「見掛け倒しなのは、歳を取れば取るほど哀しい。
誰も気が付いていなくても、俺自身がはっきり、どうしようもなく気が付いている。
若い頃は切ったり撃ったりやっていたのに、今ではテレビに映る残虐な場面 を見るのが嫌なのだ。
サスペンスやホラー映画もヒッチコックまでで、オーメンからは見ないことにしている。
注射だってされるのも嫌だし、他人様がされているところを見るのも嫌だ。
綺麗な少女が白血病で死んだりする映画なんか、たとえ滝川クリステルちゃんでも見るものか。
昔のイメージが残っているから、皆、俺を大酒呑みだと決めているが、房錦関や吉葉山関と呑み比べをしたのなんか、遠い遥か昔のことで、今は四合呑めば転んで起き上がれない。
強面で豪放磊落を装ってはいても、それも実は見掛け倒しで今の俺は気が小さくて、細かいことが矢鱈、気になって仕方がない。
だからこの頃、俺は思いきった悪口が言えなくなったし書けなくなった。
「外れるのを怖れて買い目を増やすな」なんて書くけど、馬券の買い目が絞り切れない。
もう喧嘩も戦争も、恋も金儲けもなにも出来ない爺いだと、上戸彩ちゃんと滝川クリステルちゃんだけには知られたくないんだ。
読者と世間様にはうまく誤魔化して、本当の姿は悟らせない。
そんな技術があるから、俺は筆一本でまだ喰っているんだ。 」
(第45回 『見掛け倒し』 より引用)
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ご同輩、人生は深いよ。