冬
12月
午後5時。
江ノ島の残照。
見ている人は誰もいない。
淡い群青の空。
炎の色が、
真っ黒な島影を縁取っている。
島の灯台の鉄骨一本一本まで
島の稜線の木々の枝一本一本まで
くっきりと。
絵本のなかの影絵のように。
澄んだ宵空、
島影の上に
細い月。
むこうには
半島の灯火が、星のようにまたたいている。
ごく遠くまで。
島の集落の灯も、
どこか遠い時代のもののように
ぼんやりと
冬の澄んだ空気ににじんで
漁火のように
潤んだ眼のように
囁く森のように
共鳴する音のように
発光している。
投稿者 vacant : 2010年12月10日 01:48 | トラックバック