2011年10月30日

三浦: 松原隆一郎さんが、毎日新聞の書評で「シェアの話をしよう」を取り上げて下さったんですが、シェアし合う消費というのは、結局アダム・スミスの言う「共感」としての経済という原点に戻ったんだということを買いて下さったんです。サントリー学芸賞を取った『アダム・スミス』(堂目卓生/中公新書)を読むと、スミスはいま一般的に思われているように、単に自由放任で競争すればいいと唱えたわけではなく、また格差を生む社会を是としていたわけでもなく、むしろ共感にもとづく富の公正な配分を重視していた。市場とは本来競争の場ではなく互恵の場である、世話の交換の場であるとスミスは考えた。「個福」ではなく「公福」を念頭においた学問だったわけです。

河尻: そういった考え方は経済学のトレンドにもなってきているようで、ノーベル経済学賞を受賞したオストロム教授の功績は、「経済学の根本は市場に関することではなく、資源分配の問題だ」と示したことにあると評する人もいます。


三浦展「新しい市民倫理としての『シェア』の話をしよう。」(聞き手 河尻亨一)より

『広告』vol.386 2011年7月号 所収



投稿者 vacant : 2011年10月30日 02:22 | トラックバック
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