昼時、食堂にて。
「今通った人、何にでも酢入れるんですよ。普通、ラーメンぐらいにしか入れないじゃないですか。もう全部。自分が食べるもの全てにかけるわけですよ。うっかり隣に座った人、可哀想ですよね。食ってる間中、酢ですよ。ありえませんよ。味噌汁に入れた時は本気でびっくりしましたけどね」
げ。知り合い?
「いえ、食堂に来てる人を見てると楽しいですよ。特にひとりで来てるのが狙い目ですね。もう、風貌があからさまに他の追随を許さないっていうか、さっきの酢男にしたってそうですけど、他人とのコミュニケーションに問題を抱えてるっていうか、要はボンクラ率高いですね」
まあ、いろんな人がいるからね。
「ええ。あと、ミスター・カレーライスって呼んでるジェントルメンがいるんですよ。もう毎回毎回マシーンのようにカレーを食い続けるんですね。決まった時間に現れて、食券機に並んで必ず手持ちの小銭で食券買って、これは既に右手に320円を握り締めてるんですよ。グリーンのトレイに載せるスプーンの位置も決まってて、カレーコーナーでの立ち位置にきっちり並んで、床に順路がバミってあるのが脳内で見えるのか同じルートで必ず同じ席に座って、スプーンを持つ手首の角度とか同じで機械的に食ってますね」
よく見てるなー。席が空いてない時はどうすんだろ?
「そんなときミスターは、すっごい残念そうな顔をしながら背後に立ってプレッシャーをかけるんですよ。しかも巧妙に人を待ってる振りをしながら、時計を見たりね。その席を実力で奪うまではカレーが冷めるのも厭わないですね」
さっきから思うんだけど、君ね、声大きいよ。そこにミスターいるじゃん。
「まあいいじゃないですか。我々だって毎日同じモノを食べてたら、その食品名が付くんですよ。これは誰にでも起きることなんです」
あ、アンパンマン来た。
「それ、見た目じゃないですか」
投稿者 yoshimori : November 5, 2005 11:23 AM | トラックバック