ブルックリン、脊髄損傷、18時42分。
「古書店で購入した書籍には様々な物体が挟まれている」とは前回の言だが、無理ぐりに連作。
今日の栞。
A4コピー用紙を半分に切った裏紙として使用されている。
折り畳まれた半紙をいけないと知りつつも開いてみる。
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高木様
3月分 100
4月分電気代 110
3月~4月水道代 2,822
合計 2,932-
3,032-
よろしくお願い致します。
広瀬
TEL 3647-601X
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黒ボールペンで書き付けられたメモライズ、ていうか署名入りの提出書類らしき紙切れは、不用意にも電話番号付きだよ、広瀬。
いや、むしろこの個人情報の記載された用紙を放棄したかつての所有者は高木である。
高木と広瀬は、家主と店子の関係か。
よもや広瀬も栞代わりにされ、他人に自分の光熱費が曝されていようとは夢にも思うまい。
下宿先では使い放題だろうか、電気代が異様に安い。
しかも「3月分 100」、合計下の金額「3,032-」だけが鉛筆書きで、四月末日当時、高木から「3月分はどうした」と執拗に責められ、算出したのが100円という、やるせない広瀬の日常を暴き出す。
これ、たぶん平成じゃないな。
裏面白紙部には鉛筆でのメモ書き。
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奥の方 オフィスタワー
13階で
第一制作
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何やら業界テイストな走り書き。
黒電話の受話器を首で固定しながら、不案内な打ち合わせ先を告げられ、「どっち? え? 奥の方?」と書き付ける高木の姿が目に浮かぶ。
「第一」の「第」は略字なので、若年タカギではない模様。
「おくのほう」ではなく、「おくのかた」と詠むとやたら淫靡な感じに響く。
・・・見様によっては、サラリーマン川柳のようでもあるな。