上京区、腐ったトマトに価値を付加、7時56分。
忙しいらしく、店員の出迎えも無いまま禁煙席に座りチャイムを鳴らす。
水すらも来ないので再度チャイムを鳴らす。
未だ来ないので、卓上の紙ナプキンを自作のサインで埋めてみたり、シュガースティックの中身でテーブルにねずみの絵を描いたりして時間を潰し、隣席の客が顔をしかめて出てゆくほどの咳をし続けた頃、店員が半笑いでやってくる。
三時の方向には、明日をも知れぬ若い男女六人がサッカーばなし。
騒々しいと思う度量の狭さの大人だが、ひとりだけいる女子のオーダーがやたら丁寧なので許す。
左手には、空になったジョッキをテーブルに幾つも並べた朝から素敵な老人と中年男性が向かい合う。
話が佳境に入っているようで、自然と声を荒げている。
「うるせえ、馬鹿野郎!この野郎! やんのか? おらー。買うのかよ、あ?」
酔客老人は朝から凄い剣幕だ。
男女六人の動きが一瞬止まる。
年金で飲んでるのかと思うと、老後の新しい可能性を感じる。
「お、買うよー。最後まで付き合ったろうじゃねえか。な、僕はね、おじさんのことが好きだから、こうして一緒に飲んでるんじゃないか」
向かいに座る中年男性は、老人の怒声を受け止めつつ、次の店へと誘い出している。
この時間にファミレスから出て、何処へ向かうというのだ。
「おうよ、お前買ったんだからな、逃げんなよ。行くぞ、この野郎」
乗せられてよろよろと杖で立ち上がる老人。
付添人の姿を探すが、当然見つからない。
そこへサンボマスター似の店員が、「他のお客様のご迷惑になりますので」と余計なひとこと。
酔った老人の姿は既に無く、中年男性は「御免ね、申し訳無い、失礼しますよ」とレジへと向かう。
んもう、元凶は去ったんだから、空気読め。
投稿者 yoshimori : January 25, 2006 11:59 PM | トラックバック