「傘なんざ、女子供の持つもんだ」
駅前の焼肉店で知り合った、深谷で不動産業を営む元社会科教師で胃腸の悪い痩せた男は、排気量が軽自動車を遥かに越える逆輸入された二輪車に跨り、背中の途中まで伸びた長く色素の薄い髪を雨風にさらしながら、顔に霧雨が掛かるまいと傘を斜めに持つ私を非難した。
土砂降りの時はどうするのさ?
「どうもしない」
何で焼肉屋に来て、肉を食わないんだ?
「胃が受け付けない」
そのくせ、酒豪である。
しかも、フォアローゼスのブルゾンを着ながらワイルドターキーを飲み続けるという、何か儀式的なスタイルを取る。
彼の内臓機能のバランスは著しく崩れている。
相互理解が得られないまま別れ、なおも雨は降り続ける。
彼は今日も深谷近辺で雨に打たれ続けているのだろう。
彼は身内の中で唯一、死を連想させる。
酸性雨に打たれながら死に臨んだルトガー・ハウアーを思い出す。
(了)
投稿者 yoshimori : May 19, 2006 09:56 AM | トラックバックこないだはどうも。
画素、画素とうるさかったねえ。
豪徳寺もよかったけど今度は竹ノ塚にしようよ!
先日はお疲れ様でした。
砒素、砒素されてもなんだかって感じでしたよ。
竹ノ塚もいいけど、雪谷大塚もはずせないぜ!