自販機から発せられるアルミ缶の落下音は通りによく響いた(気がした)。 中腰になって缶と小銭を同時に取り出す。
プルタブを引く指が乾燥しきっている。 よく見ると爪を切り過ぎているようだ。 道行く人に「開けてくれろ」とは言えない。
缶の側面に鋭利なものでも刺そうかとも思う。 が、あいにくそんな物騒なものは持ち合わせてはいない。
折り合いの付かないまま、缶ごと植え込みに放り投げる。
(續く)