ギター片手に河原を歩く男。
時折座っては適当に弾き語る。
「そこのお前」
は、はい。うるさかったですか。
「ああ? なんか唄ってたな。それより、それ取ってくれ」
それってどれですか?
「それだよ、目ぇ付いてんのか?」
ああ、この猫じゃらし。
「違うよ、使えねぇなあ。それだってば」
このナナフシですか。
「それはただの枝っきれだろ! その隣のだよ!」
ああ、これ。はいはい。
「これじゃねぇよ! これ何だ!? 虫か? 石? 気持ちわるっ」
たぶんどっちでもないです。
「いらいらするなあ。お前の足元にあるそれだよ」
このツナ缶ですか、空ですよ。
「その中の小銭に用があるのよ、ふふ」
厭な猫だ。
(了)
投稿者 yoshimori : November 7, 2006 11:59 PM | トラックバック