鉄瓶を頂く。
奥州山形鋳物づくりに全てを捧げる釜師、菊地政光の経歴書付だ。
桐箱に納められていて、何やら高級感に溢れている。
頂き物なのに嫌らしくも価格を調べると、六万円を超えている様子。
うお、換金してえ。
そんな台所事情はさて置き、経歴書とは別にもう一枚添付されていることに気付く。
「茶の湯釜の取扱について」という題名以下、十四ヶ条の注意事項が記されている。
一、釜の取扱いは必ず釜かんを用いて釜の肌には絶対に手を触れない様に心掛けよ。
ああ、熱い釜は火傷しちゃうからね、と思いきや、「手脂が付くから止めろ」と言っている様子。
もう、敷居が高過ぎて前に進めない。
一、釜を初に使う時は、最初に沈降炭酸カルシューム又は重炭酸ソーダ小匙一杯
を釜七分目位の水(湯)を溶かして充分に沸しなさい。
次は真水で二回程沸すと内部の砂土、金気が完全にとれる。
重炭酸ソーダ(重曹)は菓子作りに使うからその辺で売っているのは分かるが、沈降炭酸カルシウムって何だ。
「ちんこう」は重いってことか。
調べると、薬局で買えることが判明するが、とりあえず家にある重曹で代用。
指示通りに手順を踏まえ、砂土、金気は取れて、「仕込み」は完了。
さあ、茶でも淹れよう。
一、釜は絶対にガスにはかけないこと。
え? 何ですと?
ごめんごめん、ちょっとよく聴こえなかったんだけど、もう一回言ってくれるかな。
・・・。
そういう大事なことは最初に書いとけよ、菊地。
全然家庭向きじゃないや。
何か腹立たしいので、ガスの火でガンガン沸かしてますが。
いつか爆発しないかと心配。
(了)
投稿者 yoshimori : February 1, 2007 11:59 PM