週末にあの子を助手席に乗せた、と打ち明ける三十路を幾つか越えた静岡県民、もやもやした気持ちを周囲にぶつける。
「あの子」が誰かも説明がないまま、話は続く。
「あー、もう!」
どうしたんですか、何やらかしました?
「違うよ。もうさー、忘れちゃってるわけよ」
何を?
「あれだよ、あれ。ちゅーのやり方だよ」
ちゅう? あんたいくつになったんだ。
「そういうのはいいんだってば。忘れたから思い出したいんだよ」
例のあの子にそう言えばいいじゃないですか。
「ばっ、だっ、だからさー、その前に思い出したいわけよ。じゃあ今から動画撮るからさ、君ら目の前でやってみてよー。ほらー、早く早く」
パワハラの上にセクハラ。
(了)