April 26, 2007

『なやまない』

『行人』 夏目漱石

【登場人物紹介】
二郎:たぶん主人公。職業不明。すぐ悩む。
一郎:教師。賢過ぎて周囲から孤立。漱石自身とも言われている。
直(なお):一郎の妻。二郎の兄嫁。わりと適当。
母:あまり登場しない。
重(しげ):一郎・二郎の妹。一郎を偏愛し義姉を憎む。

扱いが難しい兄一郎から「直を試してくれ」と頼まれる弟二郎。
「兄さん、それじゃブラックメールじゃないすか! ほら、ロンブーが出てるあれ、彼氏が彼女を試したりするやつ、子どもに見せたくない高ランキングの」

持ち前のキャラで適当にかわしてはみるものの、
「兄の俺が弟であるお前を信じているのは大前提だから、直の本心が知りたい」
と取り付く島もない様子。

台風直撃の和歌の浦は回線が断線し、電話が不通になる。
母、一郎不在のまま、止む無く現地で一泊することになる、兄嫁である直と義弟の二郎。
お約束通りに停電となり、直の暗闇でドッキリ生着替えを経て、中学生の如く悶々とする二郎。

直は直で二郎に、
「今から海に行って飛び込むもOK」的な発言をし、
「危険なことが好き」→「夫の弟を誘っちゃお」と二郎に妄想を抱かせるには十分な振る舞いで、危うく手を出しかける一面も。

夜行で東京に帰った一郎、直、母、二郎。
二郎は、兄に旅館でのエピソードを話すタイミングが掴めないまま、日々は無為に過ぎてゆく。

兄との確執に耐えかねた(と思い込んでいる)二郎は家を出、下宿住まいになった折、兄に奇行が見られ始め、周囲は狼狽し始める。

奇行①
講義中、矛盾点を生徒に質問されるが、同様の内容を繰り返し、挙句ぼんやりとしてしまう。

奇行②
妹重にテレパシーを試し、効かないと知るや「鈍感だな、御前は」と吐き棄てる。

お約束通り、直は二郎の下宿へ訪れ、一瞬微妙な雰囲気になるものの、特に何もなく、もやもやした二郎を置き去りにし、車夫を呼んでさっさと帰る。

明治を代表する文豪の描く、月刊マガジン連載作品みたいな展開が素敵。

(了)

投稿者 yoshimori : April 26, 2007 11:49 PM
コメント

「兄さん、それじゃブラックメールじゃないすか! ほら、ロンブーが出てるあれ、彼氏が彼女を試したりするやつ、子どもに見せたくない高ランキングの」
ってのりの夏目漱石、想像つきません( ; ゚Д゚)
悶々してるのも想像つかず・・・。

あの文豪もなかなか乙なストーリー書きますなぁ

Posted by: hyde先生 : April 27, 2007 11:55 PM

旧千円札の文豪はわりとああいう展開なので、今日まで広く読まれているのだろうと思うわけです。
何せロンドン帰りなんで、チャラい漱石先生がデフォルトとご理解頂きたく。

Posted by: 義盛 : May 1, 2007 11:00 PM
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?