May 16, 2007

『関宮町、8時12分。』

『同日同刻―太平洋戦争の開戦の一日と終戦の十五日』 山田 風太郎

広島と長崎に原爆が投下された昭和20年8月、広島逓信病院に「府中方面からの快報」が届く。

実は同型の特殊爆弾を日本は既に完成させていたが、あまりにも非人道的だという理由から使用を控えていたとのこと。
此度、米軍が使用したことにより、サンフランシスコ、サンチャゴ、ロサンジェルス、カリフォルニアを目標として、米国西海岸へ向けて6機の帝国海軍爆撃機が出撃したと聴き、病室内がにわかに活気付き、ある者は凱歌あげた。

同日、長崎にも同様の流言が流れたという。
浦上第一病院では、新型爆弾投下により沖縄、アッツ島、キスカ島、サイパン島を奪還し、ニューヨーク、ワシントンにも投下されたことになっている。

追い詰められた人間が身勝手に思い描く夢、ひとはそれを狂気と呼ぶ。

(了)

投稿者 yoshimori : May 16, 2007 11:59 PM
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