例に漏れず今年も健診を受けよとの指令が下り、中抜けして診療所を目指す。
東京駅で下車し、どこまで東京駅と言い張るんだどんだけ歩かすんだという距離を経て到着。
看護婦という単語を排除して正解と人差し指を指したくなる看護士の群れに混ざるひとりの老婆。
あろうことか、自分の名前を呼びやがる老婆。
何故に患者の老婆から名前を呼ばれなければいけないのか、としばし硬直する。
「はやく、まだやることあるんだから」
ああ、この人は医師なのかドクターなのかと、診察室に案内される。
「おひる食べてないんでしょ、おなかすいたねー」
いや、君が喰うなっていうから健診っていうから喰うてないんじゃ!
血と尿を供物の如く捧げ、寄りかかるなと記されたポールに寄りかかり、カラダに悪そうな何とか線を浴び、着替えもそこそこに追い出される。
遅い昼食を摂り、職場へと戻る。
「どうでしたか、健診は?」
不二子似の女医がいたよ。
「まじすか!? 峰、やばいっすね。いいなー、不二子健診。もう一回そこで受けたいなー」
腹いせに罪の無い嘘を吐く。
(了)
投稿者 yoshimori : July 5, 2007 11:59 PM