展望台へと続く下り坂。
そぼ降る霧雨が敷き詰められた石畳を死の罠へと変貌させてゆく。
山道両脇は谷底へと向かう急斜面。
アルコオル臭の吐息を放ちながらのチドリライクな歩行は命に係わると思いながらも、根拠のないマイナスイオンに癒された気になり、走るように目的地を目指す。
数名の脱落者をあっさり見捨てて、先を急ぐ。
見上げた山頂は霧に閉ざされている様子。
下界も同様に雲海のみが拡がるのみ。
途中、山頂を激写しようと三脚を構え、霊峰を出待ちしている老夫婦とすれ違う。
何やら緊迫した雰囲気に、連れ添った年月の長さとは関係なくそれぞれの嗜好は相容れないのだと理解する。
「天狗の庭」と呼ばれる奥庭へと出る。
奥庭には天狗が舞い降りて遊ぶという、何が面白いんだか分からないプレイスポットとしての岩があり、足の大きい人が忘れていった下駄が放置されている。
この庭、「天狗の遊び場」とも呼ばれているという。
名称の直球イメージから、派手なネオンとよさげな呼び込みを探すのは止めにしたい。
(了)
投稿者 yoshimori : July 7, 2007 11:59 PM