都内ではあまり見られないはずの虫に右腿を齧られた者同士が千駄木を訪れる。
蚊は「刺す」らしいが、ブヨは「齧る」という。
ブユとかブトとも呼ぶらしいが、そんな前振りはどうでもよく、
痒さを忘れたいもうあんなやつ知らない絶対きれいになってやる!と木製の扉を押し開ける。
内装は木目調アメリカンな様子。
窓からは団子坂が見える
コカコーラは4年に1本と決めている(次は北京)
よく陽に灼けた髭従業員にオーダー。
空腹にミラー・ドラフトを流し込み、ぐらぐらしながら品を待つ。
血中をめぐるアルコールが「齧られた」皮膚を刺激する。
飲み終える。
もう1本。
「お待たせ致しましたー」
お、髭、待ったぞ。
店側の演出かバンズは横にずれている
具を思うさま眺めろとでもいうのか
チーズのとろけているところを
見ろ!
訊くところによると、パテは松阪を使用という。
一見大きなバンズはパテとレタスとトマトをはさむと、瞬く間に座高が低くなる。
大きく口を開ける気概を削がれるが、正しい押し潰しが適用され、程よい大きさでパテが口に運ばれる。
バンズの歯ごたえを意識しないが為に、松阪とされるパテの肉厚と早期にめぐり合うのだ。
髭を呼ぶ。
このくるくるポテトはどうやって作るの?
「いや、あのー、えーと」
なに、企業秘密?
「いや、そういう形なんです」
最初から?
「うーん、僕は揚げる人なんで」
ふーん。
「たぶんそういう機械があるんですよ、世界の何処かに」
どうにも歯切れの悪いコメントを残し、髭は去ってゆく。
すっかりくらくなったのでかえります
結論:
文京区には基本的に用事は無いが、何かを食べる為だけに訪れることが稀にある。
(了)
投稿者 yoshimori : September 8, 2007 11:59 PM