遠方からかつての後輩が出張で上京しているというので、幾人か集まる。
新宿、19時48分。
気が付けば既に23時過ぎ。
後輩は品川に帰ると山手線に乗り、我々は河岸を替え、飲み続けることに。
「この間さ」
何の話の続きですか?
「彼女の話」
あー、犯罪的に歳の離れたあの。
「そうなんだけど、その離れてる分ね、子供っつーか無邪気っつーか」
否定しないすね。
「聴いてよ」
あ、はい。
「ゲーセンに行ったわけ」
似合わないっすね。
「知ってるよ。あれ、ほら、あれ、何つーの、UFOキャッチャー?」
ありますね。
「その景品でこう動物の顔が付いたぬいぐるみっつーか、腹話術的なやつがあって」
パペットマペットですか?
「あー、まあそんな感じ。それを取ってってせがまれまして」
彼氏っぽいじゃないですか。
「そうね。でさー、幾ら使ったと思う?」
いやー、それを訊くってのは相当でしょ。
「相当だよ! 会社行く前に家で詰めた麦茶を毎日持ち歩いているというのに」
・・・何かつらくなってきました。
「しかも、あれさ、手を入れるところくたっとしてるじゃん、くたっとさ。こう頭があって、カラダに手を入れるタイプの」
分かりますよ。超取りづらそう。
「超取りづれえよ! でも頑張ったんだよ!」
あー、いいはなしだなー。
「つーか聴けよ! 俺はあのガラクタに6千円も突っ込んだんだよ!」
あー、はいはい、みんな見てるから、ここは抑えてくださーい。
「4千円あたりから、彼女泣き出してさ」
えー? 泣くかー?
「最終的にゲットしたからよかったけど」
それにしても、それにしてもですよ。
「でもね、この写真見てよ。めっちゃいい顔で写ってるでしょ、ほら嬉しそうーに」
って結局そういうはなしか。
でもあんたのその顔は、彼女自慢方向ではなくて、孫の写真を見せる好々爺でしかない。
(了)
投稿者 yoshimori : October 15, 2007 11:59 PM