木戸銭の安さに釣られたわけでもないが、爺趣味まっしぐらの身としてはひとつ寄席でも見てみようと、職場の近所であることも手伝って足を運ぶ。
中目黒落語会、略して「中落」(実話)
手製の高座が愛らしい
古今亭 菊六■まんじゅうこわい
この世に怖いものは何ひとつ無いと断言する男の表現方法が、
「怖くないから喰える」に特化している。
蛇に始まり、蟻、蜘蛛、猫と続き、思い出したかのように心底怯えるのは表題の通り。
古今亭 菊六、実は学習院卒で、11代目市川 海老蔵とは家族ぐるみの付き合いという。
本人談だと自慢でしかないが、扇遊師匠の言質だからよしとする。
入船亭 扇遊■厩火事
亭主の本心が知りたいとかつての仲人である旦那に相談する髪結いの女房。
仲人の旦那はふたつのエピソードを語り聞かせる。
①唐(もろこし)、自らが有する厩舎が焼けてしまい愛馬が焼け死んだにも関わらず、留守を預かっていた弟子に怪我が無かったかと心配する孔子。
②麹町、高価な瀬戸物を運ぶ妻が階段から落ちるが、妻よりも瀬戸物の心配をする旦那。
「お前の亭主はどっちかねえ」
「あたし、やってみます!」
「やってみますって、おい!」
髪結いの女房は帰宅後、早速亭主が大事にしていた皿を割る。
「何てことしやがんだ! っていうかお前、怪我はしてねえか? 大丈夫か?」
「・・・あんた、あたしの身体を気遣ってくれたのねえ」
「だって、おめえが働かねえと俺さ、昼間っから酒飲めねえじゃん」
扇遊師匠、昭和28年生まれで、北の湖とは同い年。
菊六と市川 海老蔵の話とかぶるのかと思いきや、ただ同年なだけという。
「自分がやっと真打になったと思ったら、向こうはもう年寄ですよ」
「仲入り」とは、インターミッションですな
寄席には決して来ない「三ぼう」がいるという。
『つ○ぼ』
さっそく放送禁止用語から始まる。
聴覚に障害のある方は来ないのは当然至極。
「ご親類、ご友人にそのような方がおりましたら、失礼をお詫び致します」
『けちん坊』
銭払ってまで笑いに行く奴の気が知れねえ、という理由で。
「ご親類、ご友人にそのような方がおりましたら、失礼をお詫び致します」
『泥棒』
「ご親類、ご友人にそのような方がおりましたら、失礼をお詫び致します」
古今亭 菊六■転宅
日本橋浜町の妾宅に上がり込んで、家主が残していった酒膳を飲み食いする盗人。
妾であることに嫌気がさしたという菊に「あたいを連れて逃げて」と誘われ、半信半疑ながら夫婦の杯を交わし、夫婦だからという理由で菊に持ち金全額を預かられてしまう。
翌日、妾宅に嫁を迎えに来るも誰もいない。
向かいの煙草屋に「菊がいないんだけど」と尋ねると、「昨日のうちに転宅した」との回答。
「あの女、何者なんすかね?」
「お菊さん? なんでも、義太夫の師匠らしいよ」
「ぎーだゆうー? 道理で上手くかたりやがった!」
扇遊師匠、二度目の登場
入船亭 扇遊■片棒
吝嗇家で高名な大店の主人、三人の息子の誰に身代を譲るか決めかね、番頭の進言を取り入れ、自分がこの世を去った時にどんな弔い方をしてくれるかを長男・次男・三男に尋ねる。
①長男、派手な葬式を企画し、高級膳、車代、土産、等数々の身代を潰しかねない浪費で弔うと宣言。
②次男、祭にも等しい式典を催し、鳴り物で女を踊らせ、先代のカラクリ人形を乗せた山車で町を練り歩き、最後には花火を打ち上げるという。
③三男、出棺の時刻を偽って告知し、膳を出さないばかりか香典は頂くという吝嗇振りを見せ、棺桶すらも漬物桶で代用するという。
「お前だけだ、わしの気持ちを分かってくれるのは」
「でも、父上、棺の担ぎ手はさすがに私ひとりじゃ無理です。ここは人足を雇います」
「そんな勿体ない! わしが棺から出て担ぐ!」
いやいや、扇遊師匠の鳴り物演技が素晴らしく、いつまで続くのか血管とか切れたりとかそういうのは問題無いのか救急車を外に待たせてあるのかと心配になるくらいのテンションで終了。
東横線と井の頭線で帰ります。
(了)
投稿者 yoshimori : November 19, 2007 11:59 PM