December 04, 2007

『怯えない卓上』

数ヶ月前に聞き及んだ話を、当たり前のように続けようとする男、軽い鬱病であることをさり気なくアピールし、周囲から優しくされたいだけなのかとも思う。

「でさー」
いや、全然分からない。

「客先で会ったシステム部の女子だってば」
えー?

「ほら、あれ、髪型とかばっさばさで、片手で頬杖突きながらメールチェックする女」
あー、その描写で思い出したよ。メガネはずすと実は美人と評判の。

「そうそう! 後日談があってさ、その子ともうひとり同僚の子と3人で昼飯食べに行ったわけよ、千葉の果てみたいなところで」
千葉の果てが客先?

「うん。で、飯食ってたら、ブーンてカナブンが飛んできてさ」
かなぶん? いつの話だ。

忘れた。しかも、それがカナブンだったかどうかもあやしいで、同僚の子は『きゃー!虫!虫!』とか騒いでるわけ、ぶっさいくなくせに
まあ俺も騒ぐよ、食事中に虫が来たら

「でも、そのシステム部の子はさ、テーブルにあったティッシュの箱からティッシュペーパーをわさっわさっわさって3枚取って、無言でカナブンを捕獲して、そのままねじって潰してた
えー?

「俺と同僚の子が呆然と見てたら、さすがに何も言わずに潰したのが気まずかったらしくて、『ごめんなさい、びっくりしたでしょう』って照れてた
えー?

「いやー、かわいかったなー」

そうなのか、それでいいのか。
ある意味頼もしいが、何処か視点が歪んでいるとも思う。

(了)

投稿者 yoshimori : December 4, 2007 11:59 PM
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