December 14, 2007

『見下さない視線』

男、締め損なったネクタイが気になるのか、ほぼうつむきながら昼食を終えようとしている様子。
丼と顔の距離が怖ろしく近いまま、不意に割り箸を突き出してくる。

「そう言えば、海外に行ったことありますか」
何だ、いきなり。箸を向けるな、箸を。海外? あるよ。

「何処系ですかね」
えーと、東南アジア系。

「ブータン?」
いや、それは違うだろ。何だ、あれ、南アジア

「知りませんよ。煙草の販売が禁止されたくらいしか情報がありませんよ」
何だ、自分でふっといて。行ったのは、タイとマレーシア

「へー、他には?」
台湾とアメリカ

「意外と行ってますね。ヨーロッパとかは行かないんですか」
うーん、あまり食指が動かない。

「やっぱりですか。でも美術館めぐりとかもいいですよ」
その辺は興味がなくて。それよりも君の口から美術館なんて単語が出てくるとは。

「僕はその辺目指して行きたいですね」
へー。思い出したけど、中国も行ったな。

「あ、僕もありますよ」
そうなんだ。何てところ?

「杭州」

って何処? いや、それよりも美術館なんて建ってないぞ、その辺は。(偏見)

(了)

投稿者 yoshimori : December 14, 2007 11:59 PM
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