『カルティエ現代美術財団が認めた22歳 坂元友介アニメーション全集』
@下北沢トリウッド
①「息子の部屋」
サトシの部屋には古代インドな内装とトラップが。
レイ・ハリーハウゼンばりに動く、クリシュナ的なクリーチャーな父を襲う。
②「歯男 TOOTH MAN」
(キリンアートアワード2002奨励賞受賞作品)
木造アパートに暮らす歯男、暇なのかテレビのチャンネルをザッピング。
就寝時には歯茎にも似た寝床に潜り込む。
③「カレンダー」
「1」のロゴが入ったTシャツを着た男が、「2」に眉間を撃ち抜かれる。
「2」の男、自室に戻り、「1」から「28」までの男を殺害。
別室より「3」の男が部屋に入ってきて、「2」の額を打ち抜く。
④「在来線の座席の下に住む男 The Man who lives in the Train」
(デジスタアウォード2004ゴールデンミューズ受賞作品)
日に三度の給食付きとはいえ、密閉された空間と落ち着かない振動は逃避になりえるはずもなく、椅子の向こうに自分の姿を見てしまう。
⑤「焼き魚の唄」
(第5回ユーリー・ノルシュテイン大賞優秀賞受賞作品)
千葉県産の真鯵、スーパーで学生に買われ、「なかよくしましょう」なんて切々と説く。
オーブンに入れられ、最後に見た風景が炎のマアジ、「きれいな夕陽ですねー」と焼かれてゆく様は哀しくも切ない。
⑥「マーチングマーチ」
まだ昭和だった時代の『NHKみんなのうた』を見て、幼少期に植え付けられたトラウマにも似た暗黒面が全開。
⑦「父の話」
車両に轢かれた猫を自転車のカゴに入れて棄てにゆく父のブロンズ像が秀逸。
⑧「電信柱のお母さん」
(東京国際アニメフェア2006企業賞・東京ビッグサイト賞受賞作品)
リアルに電信柱の母、街の電力すらも自在に操り、気に入らない同級生は電撃で病院送りにすることも辞さない。
現実はDVな人間の母からの逃避に過ぎないが、少年は電信柱の母を忘れない。
⑨「蒲公英の姉」
(水戸短編映画祭準グランプリ受賞作品)
奇病か突然変異か、結核みたいな咳をする蒲公英の姿をした姉を持つ妹。
姉の世話を嫌がる妹は、姉の飲み水に塩を混ぜ、結果姉は瀕死に陥る。
妹の所業を庇い、恨むことなく接する姉に心開く妹。
絵画を通じて心を通わせる姉妹だったが、蜜月期は長く続かない。
姉は花弁が全て抜け落ち、白い綿毛姿になっている。
夢の中で姉は妹の下から人の姿で去ってゆくが、現実には窓を突き破り、綿毛を全て失くし絶命する姉の姿だった。
妹は夢で見た光景と同じ現実を、泣きながらキャンバスに描き始める。
⑩「とんかつさん ~朝~」
夢の中で微妙で中途半端な目に遭い、衣の欠片を枕元に散らかしながら目覚め、「夢か・・・」と呟く。
作中、製作者らしい男が唄う『とんかつのブルース』がおそろしくへったくそで微笑ましい。
(了)
投稿者 yoshimori : February 8, 2008 11:59 PM