February 23, 2008

◆『土器(カワラケ)折敷(オシキ)ヲ、三方ヘ』

新宿区内の神社境内にある、神饌という聞き覚えのない料理を提供する老舗料亭が来月で閉店するという。
ていうか、物理的に取り壊すのだ。
木造建築に邪念が止まらない身としては放ってもおけまいと足を運ぶ。

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赤城神社 鳥居

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赤城の社も今宵限りか

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一度たりとも湯を沸かしたことがないに違ぇねえ

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階段の途中にあるおされ照明

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畳敷き、欄間、おされ照明

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真打を待つ高座

立川 談幸 (たてかわ だんこう) ■ そば清 (蛇含草 じゃがんそう)
蕎麦40枚を手繰る男、50枚喰えたら金三両と挑まれるが、自己ベストが40枚の為、躊躇する。ていうか、走って逃げる
逃走先の信濃山中にて猟師を丸呑みした大蛇消化を助ける薬草を舐めるのを目撃した男は、消化補助の薬草を摘み取り、江戸へと戻って50枚喰いをリベンジ。
50枚目の途中で限界を迎え、外の風に当たらせてくれ、と蕎麦屋を出て、薬草を口にする男。

「おい、兄さん、遅ぇじゃねえか。何やってるんでい。・・・お、蕎麦が着物を着てやがる」

談幸師匠、ここでサゲを解説。
男が消化補助と思い込んだ薬草、実は大蛇が人間を溶かす目的で舐めたという。
つまり、この薬草は人間を溶かすだけの効力しかない。

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冬の怪談演出

立川 談幸 ■ 死神
金策もできずに妻より家を追い出される男、老人の姿をした死神と出会い、人の寿命を見分ける能力を授かる。
死神が枕元に立っていれば、「寿命が近く」、足元にいれば、呪文唱和で追い払えるという。
医師の看板を掲げてからは、偶さか「足元系死神」ばかりに遭遇し、商家の旦那連を助け、礼金で家計は潤う。
暮らし向きが良くなるに従って増長した男は妻子を棄てて、妾と共に湯水の様に浪費し、挙句妾にも見放される。
再度の金策に掛かるも、「枕元系死神」ばかりで一銭にもならないばかりか、死神医者扱いされ、世間からも見放され始める。
商家の大旦那からの治癒依頼を受け、一計を案じた男は、徹夜明けで弱っている死神が船を漕ぎ出した瞬間に、布団を180度転回し「枕元」を「足元」にチェンジするという荒技に出る。
が実は、追い払ったのは、恩人だったはずの死神だった。
何をするんだお前のせいで死神の役を追われた、と責められ洞穴へと連行される。
洞穴には無数の蝋燭が様々な長さで火を灯している。
死神よりルール違反を問われ、死ぬはずだった大旦那の替わりに寿命が尽きるという。
男、無理心中でうっかり死んだという若造の蝋燭に自らの命の灯火の移動に成功し、生き長らえる希望を持つ。

「わしは死神の役目を追われ、火伏せの神に任じられた。初めての客はお前だ」
と男の持つ蝋燭の火を吹き消す。

談幸師匠、他の噺家のサゲを語る。

三遊亭 圓生(六代目) ・・・ 長い蝋燭に火を移せなくて死亡。
立川 志の輔 ・・・ 火を移した蝋燭を持ち未だ陽の照る外に出て、「なんでぇ、外は明るいじゃあねえか。火は要らねえや」と自ら吹き消して死亡。
柳家 小三治(十代目) ・・・ 「えっくし」とうっかりくしゃみで吹き消してしまい、死亡。

別料金を支払った聴衆はこの後、料亭にて談幸師匠と食事会という。
何か複雑な気持ちで木造建築を後にする。

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さようなら、よく燃えそうな木造建築

飯田橋まで歩き、総武線、山手線、井の頭線で帰ります。

(了)

投稿者 yoshimori : February 23, 2008 11:59 PM
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