20080226 宵
寄席から流れて新宿へ。
15年来の旧知と会う。
「聞いてくださいよ」
何だ、いきなり。先にドリンクの注文をさせてくれ。
「もう頼んでおきましたから。それよりも聞いてください。わたしの元同僚がAVに出てるんですよ」
AVって、音響機器の方?
「いや、女優の方です」
高額所得者だ。
「それが、意外と売れてないんですよ」
マニア路線とかそういうの?
「まあ、同性系ですね」
あー、そっちかー。一緒に仕事してる時からそんな感じだったの?
「いや、それが全然、ていうかむしろ男に対して欲望むき出しでしたよ」
本人的にはまっすぐだと。
「そうです。もうね、一緒にお昼ごはん食べてて、恥ずかしいんですよ。その辺の店員とかを指差して『あれだったら三回いける』とかそんなんばっかりなんですよ」
だいぶむき出してるねえ。
「しかも、しかもですよ、うちの会社の名前こそ出てないですけど、グラビアに出てる時の表記が、『渋谷駅ビル元百貨店婦人靴売り場のスタッフが脱ぐ!』ってばればれ何ですけど!」
問題あるねえ。
「で、文章に『憧れていた女の先輩だったのに、無理やり倉庫に連れ込まれ、唇を奪われました』ってあるんですよ!」
盛り上がって参りました。おねえさん、熱燗もう一本。
「その雑誌掲載の翌日にですね、上司からひとりひとり呼ばれて尋問ですよ。『これは事実なのかね』ってそんなわけねえだろ、はげじじい!」
死ねーっと咆哮が響き、叫びを聴き付けたスタッフが心配そうな面持ちでおそるおそる窺いに来るという一幕もありましたが、じゃあひとつ聴くがその元同僚の今の名前は何てぇいうんだいと聞き出して、今宵はお開きで御座います。
(了)
投稿者 yoshimori : February 27, 2008 11:59 PM