坂道を転がるように、爺趣味に傾倒してゆくのを止められない。
そのうちに講談、講釈あたりにも手が出そうだ。
前回の寄席は新宿だったが、今回は上野へ。
『ひなまつり寄席』と銘打った夜の部の途中より入場。
落語 ■ 柳家 喬之進 「仏馬」
檀家からの布施を集め終わり、寺へ帰る途中の弁長と西念。
生臭極まりない弁長は道々酒を喰らい続け、やがて動けなくなると、川沿いに繋がれた馬に荷を載せ替えて、西念に寺へ連れて行かせる。
残された弁長は、馬を繋いでいた手綱と木に結び付けて寝てしまう。
やがて馬主が戻り、窮地に陥る弁長、
「かつて弁長という出家僧でしたが、身上悪くお釈迦様の罰を被り、馬になっておりましたがこの度、お釈迦様のお怒りが解け、元の体に戻れました」
と無理繰りな申し開き。
うやむやのうちに馬主に信じ込ませ、祝いの酒さえ振舞われ、寺へと帰る弁長、住職より預かってきた馬を売れと言い渡され、売りに行く道中酒を喰らいながら、馬にさえ飲ませ、売り飛ばして寺へと戻る。
馬主は見覚えのある馬を見つけるが、かつての馬は弁長だったと信じている為、また仏罰で馬の姿にされたと思い込む。
「そうか、すまねえ、弁長さん。わしが祝いの酒を無理に飲ませたから、またお釈迦様に馬にされちまったんだな」
首を振る馬。
「嘘ついたって分かるさ。お前さんの息、酒臭いもの」
太神楽曲芸 ■ 鏡味 仙三郎社中
鞠、鉄輪、枡が傘の上で転がされ、茶碗、板が撥の上で均衡を保ち、複数の笠でジャグリング。
演者の気持ちになってしまい、ひとつでも落としたら師匠に叱られる、と手に汗握る。
落語 ■ 柳家 喬之助 「寄合酒」
各々が酒の肴を持ち寄って飲もう、と長屋の連中は一度出て行き帰ってくる。
干し鱈、数の子、味噌を一日のうちに奪われた、災難続きの乾物屋。
本来は、食材奪取の後に調理失敗し、「ん廻し」に続くというが、前半のみ。
「ん廻し」って何でしょ。
落語 ■ 柳家 喬の字 「出来心」
「小きち改め、喬の字となりました。3月いっぴより二ツ目昇進でございます」
はいおめでとう、はいはいおめでとう。
「師匠のさん喬に『喬の字をください』って言ったんですけど、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『じゃあ別の考えとくよ』って言われ、次の日にも『喬の字をください』、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『じゃあ別の考えとくよ』ってそんなんで、『喬の字をください』、『小きちでいいじゃねえか』、『喬の字をください』、『じゃあ喬の字でいいじゃねえか』って喬の字になりました」
へー。
「嘘なんですけどね」
って嘘かよ。
泥棒稼業に芽が出ない半人前の男、親方より空巣狙いを勧められる。
アタリを付ける為に、家々を回って「ごめんください」と留守を確認するも、空巣が実行されてしまうと噺が成立しないので、家人とのやり取りに集結する。
漫才 ■ 大瀬 ゆめじ・うたじ
後で聴いたのだが、「高級ステーキハウスで家族4人がハンバーグを頼む」というネタを毎回繰り返しているという。
悪い夢のようだ。
落語 ■ 古今亭 菊之丞 「町内の若い衆」
新宿二丁目にいそうな風貌の菊之丞、師匠は圓菊という。
「町内の若い衆が寄って集って拵えた様なもんよ」
完全に下方面のサゲが素晴らしい。
落語 ■ 林家 正蔵 「蜆売り」
人情噺。
褒めてやるぞ、正蔵。
粋曲 ■ 柳家 小菊
通夜っぽい、いやいや変換がおかしい、艶っぽい喋りを交えての三味線語り。
ネタの七割は下方面ですが。
落語 ■ 柳家 喬太郎 「夫婦に乾杯」
「三浦和義、捕まりましたねえ。それにしても、時津風部屋ですよ。『前・時津風親方、本名、山本 順一容疑者』って、これ『親方』って要りませんよね。『前・時津風、本名、山本 順一容疑者』でいいじゃあありませんか。仮にですよ、仮にうちの一門で例えば喬の字がリンチか何かでね、こう『この野郎ッ! 喬の字! てめぇ、この野郎ッ、もうちょっとなあ、頑張れよ、この野郎ッ!』ってぐったりしちゃったりなんかしたら、うちの師匠さん喬が主犯格ですよ。だからって、『前・柳家さん喬師匠、本名、稲葉 稔容疑者』とはならないでしょ、『師匠』なんてぇ付けないはずですよ」
新製品ネーミングの企画会議の最中に同僚や上司より、「結婚して三年にもなるのに夫婦仲が良いのはおかしい、日本の夫婦じゃない」と全否定される男、確かにおかしいかもしれないと自宅に戻って妻へ難癖つけてみると、あっさりと夫婦喧嘩に発展。
「斎藤さんは、奥さんのこと何て呼んでるんですか?」
「グァ」
「奥さんの方は?」
「グァ」
結婚15年目にもなると、夫婦間の会話は既に日本語ですらない。
紙切り ■ 林家 正楽
当然予想していただろう、「雛祭」のリクエスト。
演者と客とのコミュニケーション不足で、3枚もの雛祭を切る結果に。
切る毎にディテールが細かくなる為か、3枚目の紙切り中はほぼ無口で、一枚目から比べると遥かに細かい切り口に。
夜の部主任 ■ 柳家 さん喬 「鼠穴」
夢オチ系人情噺。
師匠、今日もまた何人泣かせるんですかい。
ハネ太鼓(追い出し)
山手線、総武線と乗り継いで新宿へと移動します。
(了)
投稿者 yoshimori : March 2, 2008 11:59 PM