雨の上野広小路。
前日ていうか、ついさっきまで飲んでいた為に待ち合わせの時間にがっつり遅れ、とりあえず昼でもと鰻を喰わせてもらう。
鰻重
今まさに鰻屋で鰻店員の前で鰻を召しているというのに、交わされる会話は、
「何処其処の何ていう名の店の鰻は、ここの鰻より百倍も千倍も美味しい」
という身の危険すら感じる内容。
もうやめてぇ、と店を出る。
本鈴じゃあなくて鈴本
「えー、お足元の悪い中、いっぱいのお運びありがとうございます」
という決まり文句が大仰ではないくらいに客入りが激しく、立ち見もいたりする様子。
昼の部
前座 ■ 柳家 緑君(ろっくん)
いつも座布団を裏返しているだけの前座くん。
師匠は、三遊亭 花緑(かろく)という。
もちろん、番組表に名前は無い。
落語 ■ 古今亭 志ん八 「牛ほめ」
与太郎、叔父の普請を褒める様父から指南を受ける。
普請の後は牛を褒めろという。
「天角地眼一黒鹿頭耳小歯違(角は天に向き、眼は地を見据え、色は真っ黒、頭は鹿の如き段々で、耳は小さく、歯は乱杭である)」と言えたまではよかったが、うっかり叔父の娘に対しての評価となるという結果に。
太神楽曲芸 ■ 翁家 勝丸
座したままでの曲芸、しくじりさえも笑いに換わる。
落語 ■ 隅田川 馬石 「垂乳根」
言葉が丁寧過ぎる娘、輿入れの翌日、亭主に朝餉をと、御御御付けの具としての葱を「白根草」を購入するところまで。
落語 ■ 三遊亭 歌武蔵
「『うたむさし』と読みます。『かぶぞう』ではありません。何をどう読んだか分かりませんが、『きゃばくら』って読んだ人もいましたが」
元力士だけに、角界に関する話題から始まる。
かつての同期生である貴闘力との一番、白星取った決まり手は「肩透かし」という。
演目が無いのは、延々とワイドショー的な話しかしないから。
高座から空席を扇子で示し、「ここふたつ空いてますよ」と案内する噺家を初めて見る。
漫才 ■ 大空 遊平・かほり
客席がやたら暑い為、外へ出ていて見ていない。
落語 ■ 柳家 さん生
「大人は小料理屋で酒を飲んで欲しい」と、居酒屋チェーン店の名を連ねて、
「あんなのは未成年が行くところです」という。
女将は五十手前の未亡人という設定ができており、嵐の夜にはそんな女将を狙った男たちがL字型カウンターへずらりと並ぶのだ。
落語 ■ 林家 しん平
金髪だ。
現代劇よりも時代劇という論調だったが、話が進むにつれ、勧善懲悪でありながら不条理な展開にぼやき、合間に剣戟と決め台詞が幾つか入る。
民謡漫談 ■ 柳月 三郎
津軽三味線を教わりに青森を訪れた際、師匠の言ってる指導がさっぱり分からないという。
ラストの曲は相撲甚句にもある、鶴が亀に求婚する内容。
落語 ■ 柳家 三三(さんざ) 「長屋の花見」
よったりとした歩き方で高座に上がる三三(さんざ)、
「街で見かけたら『ミミ』って呼んでください」という。
知ってないと、普通に読めないからねぇ。
仲入り
漫才 ■ ホームラン
やはり客席がやたら暑い為、やはり外へ出ていて見ていない。
落語 ■ 柳家 はん治 「背なで老いてる唐獅子牡丹」
シマを荒らされた年老いた任侠の親分、仁義に欠けるじゃあねぇか、と殴り込みの要員を捜そうと、組の若いのを呼ぼうとするが、既に六十を超えているという。
流れ弾の銀二を訪ねるも、老人ホームに収容されている上に認知症で使い物になりそうにない。
「おぅ、銀二よ、襲撃の準備は抜かりねぇだろうな」
「あたぼうよ、ちゃんと外出許可証もらってきたぜぇ」
落語 ■ 橘家 文左衛門 「道潅」
太田道潅が歌道に入るきっかけとなった、娘から雨具を借りようとして知的に断られたエピソードを聞きかじった男、雨の日に同様のことをしようとするが、その日訪れた客は提灯を求めている。
「あんたは歌道に暗いねぇ」
「角が暗いから提灯借りに来たんじゃあねぇか」
奇術 ■ 伊藤 夢葉
牛追いの革鞭を持ち出すのだが、奇術に用いるわけでもなく、凄い音だけさせてとっととしまい込む。
「私の趣味でした」
って、えー?
落語 ■ 柳亭 燕路(えんじ) 「火焔太鼓」
特に何か書くことも無いけど、きっちり演っておりましたな。
昼の部、追い出し
雨の中、湯島方面へ足を運ぶ。
湯島天満宮
梅花で高名な神社だが、降雨の為か散っている様子。
本郷まで歩き、丸の内線、銀座線、井の頭線で帰ります。
(了)
投稿者 yoshimori : March 20, 2008 11:59 PM