痛飲で迎える朝、小腹がすいたというか時刻的にはふつうに朝食なのだが、胃腸だけが酒の勢いで無駄に体育会系。
夜明けの牛丼なんてぇ、さっぱり色っぽくないねぇ。
あ、もう、並だけにしときなよって、止しなって、余計なの付けるのは。
店員笑ってるよ、何がおかしいんだ、この野郎、前掛けずれてんぞ!
お待たせ致しましたーって、おめぇ全然言えてねぇじゃねぇか、おあたしぇひたしやしたーにしか聞こえねぇぞ。
狭いカウンターに並んだねぇ、丼、小鉢、碗、もひとつ碗、あと何これ、茶? ほんとに茶か、これ、うっすい色だな、おい。
おぉぉぉぃ、紅生姜入れ過ぎだって、ほら空になっちゃったじゃんか。
だから、七味掛け過ぎだってば、おぉぃ、隣の席から七味取るなよ、ひとが手伸ばして触れ合ってときめいてもな、酔っ払いの親父しかいねぇぞ。
あぁ、もう喰えねぇな、おぅ、兄ちゃん、勘定だ、勘定。
幾らだ、兄ちゃんよ、これで足りんのか、小銭は要るのか?
何だこれ? あ、クーポン券? タダで喰わしてくれんのか? 卵? 何の卵だ、にわとり? ていうか、にわとり以外ありえねぇだろ、真に受けんなって。
卵だけかよ、しみったれた話だな、年間で丼喰わせろってんだ。
おぅ、兄ちゃん、冷てぇ水くれ、おぅよ、水よ水。
ぬっるい水だな、これ、水道から出してんだろ、兄ちゃん。
あぁ、じゃ帰るから、ごっそさーん、ばーんて自動ドア、自動じゃねぇーっ!
なに笑ってんだ、店員、おめぇ、あるがとうございましたーって何だよ、ありがとうだろ、しかもヤカンに言ってんじゃねぇか、視線の先がよ、ヤカンなんだよ、親父の頭じゃねぇんだ!
何でこんなとこで工事やってんだ、暇なやつらだな、本職は何だ! 植木屋か! どうせろくな仕事じゃねぇんだ。
あ、朝日痛ぇ、溶ける溶ける溶ける。
泥酔って少しラブリー。
(了)
投稿者 yoshimori : March 21, 2008 11:59 PM