April 16, 2008

『麺』

遅い昼食を頂こうと、社食へと向かう。
目当ての特製味噌つけめんは既に売り切れており、手描きイラストのぶっさいくな白衣を着たシェフが憎々しもふてぶてしい表情で謝罪している様子。
仕方ねぇカレー南蛮うどんでも頼もうなんて、麺の受け渡し場へ向かうも「うどん終了」なんて趣旨の札が忌々しげに立てられている。
じゃあいったいなんにしたらここはまるくおさまるんですかとふつふつと沸きいずる念ばかりが先行してしまい、麺の場に並んでしまった手前、止む無くカレー南蛮そばを頼む。

「はい、ご注文どうぞー」
カレー南蛮そばをください。

「はい、カレー南蛮そば~一丁~」
と、厨房の男、前の客がオーダーした半ライスを取りに行く。
ひたすら麺を茹でる別の男が顔だけをこちらに向ける。

「ご注文をどうぞ」
あ、さっき言いました。

半ライスを持った男が戻って来て、新しい客を迎える表情で言う。
「はい、ご注文どうぞー」
・・・カレー南蛮。

「うどんですか、そばですか」
・・・そば。

「はい、どうぞー」

ていうか聴けよ、とは言ってないがな。
勝手にリセットするな、と言いたい。
忙しいのなら事情も分かるが、前のひとりが半ライスひとっつ頼んだだけで、カレー南蛮そばゼロカウントかい。

「はい、カレー南蛮そばね」

何でしょうね、この黒いカタマリは。
南蛮? 南蛮が黒いのか。

隙を見て、別に盛られた葱の皿を数点くすね、テーブルへ持ち去るのが精一杯の抵抗としたい。

(了)

投稿者 yoshimori : April 16, 2008 10:45 PM
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