April 23, 2008

『翔』 (第壱回)

職場のある七階から六本木方面を眺めていると、外でぶら下がっている窓拭き職人と目が合う。
自分には絶対向いていない職種として物珍しくもしげしげと見ていると、実は窓拭き職人ではなく、ハンマーを用いて当建造物を覆っている赤い煉瓦の強度を確認している様子
とはいえ、その行為自体が放って置けばなんでもないはずの煉瓦を剥がし、地表をそぞろ歩く通行人らに煉瓦の破片を降らしそうで、見ていると不安になり、数羽の鳩に突付かれて中止になればいいと念じてみる。

傍らで紙パックの牛乳を音を立てながら飲んでいる同僚、方向違いのが通じたのか鳩について語りだす。

「前の職場が倉庫だったんですよ」
天井高いね。

「そう、夏場暑かったんで、天井近くにある排煙用って煙を逃がす為の窓を開けっぱなしにしてたらですね、鳩ががっつり入り込んでて」
追い出すのたいへーん。

「大変ですよ。ひとりは素手で捕まえようとしてあっさり失敗してましたし、ひとりはで追うんですけど、全然窓の外へ逃げてくれないんですよ」
素手、いけそうで意外と難しいよねぇ。

「で、その時やってたのは、軍手をこう丸めてですね、投げるんですよ」
ぶつけるの?

「いえ、窓の外へ放るんです。そうすると、やつら、釣られて外へ飛び去るんです
習性かー。

誰の知恵なのかは分からんが、鳩の生態を熟知した効率的な方法だ。
鳩が家に入り込んでお困りの方、是非!

(了)

投稿者 yoshimori : April 23, 2008 07:53 PM
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