「もてる」なんてぇ言葉がありますな。
「あなた、おもてになってらっしゃる」、「もててもてて困る」なんてぇ言い方をしますねぇ。
昔っから、「いちみえ、におとこ、さんかね、しげい、ごせい、ろくおぼこ、しちぜりふ、やぢから、きゅうきも、とひょうばん」なんてぇ言われておりまして、このうちひとつでもその身に付いてるなんてぇと、ご婦人からおもてになるってぇはなしですな。
「いちみえ」ってぇと、「一見え」ですな。
形が良い、見てくれが良い、着ている服が良いってぇと、これは無条件に好印象ってぇはなしでねぇ、何を今更ってぇ感じですな。
「におとこ」、これは「二男」、男前、男振りが良いってぇと、これも今更何をってぇ感じでねぇ。
「さんきん」、えー、「三金」ですな。
だんだんどうでもよくなってきましたねぇ。
いらいらしますな。
「しげい」ってぇと、「四芸」ですな。
何かに秀でてると身を助けるってぇわけでねぇ、これが「ゲイ」なるってぇと、もうフルスイングで空振り感満載なんですな。
「ごせい」なんてぇのは、「五精」ですな。
よく精を出すなんてぇ言いまして、何かに対して一生懸命に取り組むってぇ姿勢が肝要だってぇはなしなんですが、だんだん耳が痛くなって参りましたねぇ。
「ろくおぼこ」ってぇのは、「六おぼこ」なんて漢字もありませんな。
元来ならご婦人に用いるんでしょうがねぇ、純朴、ピュア、世間ずれしてないなんてぇ表現もありますが、童貞くせぇってぇはなしには違いござんせん。
「しちぜりふ」、これは「七台詞」ですな。
江戸っ子風に、「ひちぜりふ」なんてぇ言いますってぇと、粋なんだか言えてないんだか分かりませんな。
喋りが巧いってぇと、もてるどころか世渡り上手になりますねぇ。
そりゃあ、芸人なんてぇのはもう、しゃくれててももてるわけですな。
「やぢから」ってぇのは、「八力」ですな。
格闘技好きのご婦人ってぇ方にそうそうお目に掛かかることはござんせんがねぇ、リアルにDV受けてる方なんてぇのはたぶん見ないでしょうな。
「きゅうきも」なんてぇのは、「九肝」ですな。
肝が据わってるなんてぇと、これは頼りになりますねぇ。
ただのレバー好きってぇと、だいぶ頼りないですな。
最後、「とひょうばん」は、「十評判」ですな。
評判が良いってぇと、隣の教室からも女子が見に来ますねぇ。
キモいってぇ評判でも人は見に来たりもしますな。
とまあ、無いものなんてぇのをあげつらってみたところで、そこにはなーんにも無かったりなんてぇことに気付いたりしますな。
それでもあたしゃ、「三金」ぐらいは頂きたいですねぇ。
(了)
投稿者 yoshimori : April 25, 2008 11:59 PM