灰皿と小皿の区別も付かないまま、突き出しの小鉢に灰を落とす。
誰かが何かを指摘しないと始まらない、新宿三丁目、24時。
「最近さ、地震多くない?」
この間もありましたね。
「わたし、二階で寝てるんだけど」
木造一軒家でしたっけ?
「違うわよ、失礼ね」
一軒家が?
「木造がよ」
木造いいじゃないですか、よく燃えるし。
「火事よりも地震の話よ」
はあ。
「ほんっと地震が怖いから、ぐらっと来るとすぐ窓を開けてベランダに転がり出ることにしてるの」
転がり出ますか。香港映画っぽいですね。チョウ・ユンファ。
「ユンファなんて関係無い!」
おや、キレどころじゃないですよー。
「何か腹立たしいわね。屋根が落ちてきても潰されないように外へ出る為よ」
何の為に?
「失礼ねー、何の為にってー。そういう質問は止めてくれる?」
自分の場合、例えぐらっと来ても気絶してる状態に近い熟睡なんで、到底目が覚めるとも思えず、揺れた直後にすぐに覚醒して助かりたい脱出しなきゃ死にたくないなんて気持ちが分からないのかもしれない。
(了)
投稿者 yoshimori : May 12, 2008 11:59 PM