義盛記

『三社トハ観音、船ト示現ヲイウ』

浅草は浅草寺なんてぇいいますてぇと、都内で最古の名刹とされておりましてねぇ、
山号を金龍山、聖観音を御本尊とします。
いわゆる噺における、「浅草の観音様の裏」なんてぇと、今は跡形もありませんがねぇ、当時は「吉原」なんてぇ、どメジャーな色町なんてぇのがありまして、吐いて棄てるほどのドラマが生まれては吐いて棄てられてたんでしょうな。

雷門

切妻造の八脚門なんてぇ呼ばれてる門の向かって右の間にはってぇと風神が、左の間には雷神が安置されてますがねぇ、この日の風神様は「改装中」なんてぇ札を出してるってぇと、お姿をお見せになりません。

雷門から仲見世通りをひた歩きまして、宝蔵門を抜けるってぇと、正面には本堂、左に見えるはライトアップされた五重塔。

五重塔と本堂

五重塔

本堂（観音堂）

1945年の東京大空襲で焼失するまでは国宝だった本堂でしたがねぇ、再建された現在では鉄コン筋クリート造なんですな。
五重塔はってぇと、関東大震災では倒壊こそしなかったんですがねぇ、本堂同様に空襲で燃えちまいまして、やはり鉄筋造りってぇ塩梅ですな。

ひと通り浅草を散策しますってぇと、小腹があれしてきましたんで、ホッピー通り、煮込み通りなんてぇ呼ばれる、ひどく限定的なメニューしか置いてないってぇ通り沿いにある、外飲み専門みてぇな店に入りましてねぇ、約束通りに煮込みを突付きながら般若湯をあおるってぇ運びとなりますな。

平日とはいえ、まだ空は明るく夕刻ってぇぐらいの時刻なんですがねぇ、店の奥の小上がりにいる、子供を背負いながら泥酔している若い母親なんてぇのを眺めているってぇと、アジア的な軽いカオスの中にいるなんてぇ眩暈が酔いを助けたりもする、浅草寺からの一席で御座いました。

（了）

投稿者 yoshimori : May 21, 2008 11:59 PM