渋谷より地下鉄銀座線に乗って上野広小路まで来ましてねぇ、とんとんとんとんと階段を上がるてぇと、幟が幾本か見えて参ります。
鈴本演芸場、夜の部で御座ィます。
落語 ■ 古今亭 菊生 「寄合酒」
酒肴を持ち寄ろうってぇ算段になりますってぇと、長屋の貧乏人らはこぞって乾物屋を狙いましてねぇ、ほとんどの酒肴は万引き、窃盗されまして、乾物屋の主人にとっては凶日と相成りますな。
挙句、鰹節から出汁を採るなんてぇ事を知らない野郎が台所を預かるってぇと、抜け殻になったかつぶしを笊いっぱいに盛り付けて、煮汁で顔や褌を洗ったりして台無しにするんですな。
落語 ■ 柳亭 市馬 「狸賽 (たぬさい)」
予定されていた権太楼師匠は欠席の為、昼の部にも出演の市馬師匠の代演で御座います。
狸の恩返しってぇ骨子なんですがねぇ、男は何でも化けられるってぇ狸に賽子(さいころ)になるようリクエストしますな。
男、帳場で丁半博打の胴元を受けますってぇと、狸に賽の目を指示してひと儲けをするんですがねぇ、怪しんだ帳場の若い衆は「賽の目を口にするな」なんてぇ要求しまして男は「五(ぐ)」を狸に伝える為、「湯島天神の梅鉢」ってぇ表現を用いますな。
男の意図としては、花弁五枚の梅の花に「五」を求めたんでしょうがねぇ、狸、
「衣冠束帯、天神様の姿」となりまして、胴元のイカサマがばれちまうってぇ噺ですな。
太神楽曲芸 ■ 翁家 和楽 社中
若手の使う白い毬の質感が気になりますな、軟らけぇのか硬ぇのか。
ナイフ投げの獲物がいつもよりも大きく凶悪で、当たれば怪我どころで済まないってぇのが緊迫感を煽りますな。
落語 ■ 柳家 喜多八 「筍」
喜多八師匠、お会いしとう御座いました。
出囃子が鳴り始め、顎をやや上にして気だるそうに現れる師匠のやる気レス具合ったらありませんな。
武家の当主、下男の可内(べくない)に晩の菜を尋ねるってぇと、隣家の竹林から自邸に生えてきた筍を膳に出すと答えますな。
とはいえ、一応武家な体裁の為、「渇しても盗泉の水を飲まず」と可内を叱り付けますがねぇ、「鰹節を掻いて待っておる」と喰う気全開なわけです。
断りを入れる為、可内を隣家へ向かわせまして、隠居に告げるってぇと、
「お願いが御座います、
ご当家様の筍殿が手前屋敷へ泥脛を踏み込みまして御座います。
世が世なら間者も同然、召し捕って手討ちに致します故、その段お断り致します」
なんてぇ申し上げるんですがねぇ、隣家の隠居は、
「遺骸を引き取りたい」と返します。
それを聞き及んだ当主、再び可内を隣家に差し向け、
「筍殿は既に当方において手討ちに致して御座います。
遺骸はこちらにて腹の内へと葬りました故、その段お断り致します。
これは筍殿の形見の衣に御座います」
ってぇと、筍の皮を撒きますな。
「哀れ筍、かような姿に。あれ、かわいや、皮嫌」
落語 ■ 三遊亭 金馬 「長短」
金馬師匠、膝を傷めてるってぇので、釈台が置かれ、背もたれを用います。
「琴欧州は膝傷めながら優勝したんですがねぇ」
来年八十歳ってんですからねぇ、達者なもんですなァ。
ここで、仲入りで御座います。
紙切り ■ 林家 正楽
ご挨拶代わりは、いつもの「相合傘」。
「長良川の鵜飼」、「万里の長城」、「招き猫」なんてぇのをリクエストに応じて切ってゆきますな。
落語 ■ 柳家 さん生 「ぞろぞろ」
浅草に太郎稲荷なんてぇ社がありまして、吉原に向かう道中にあるってぇロケーションだったんでねぇ、大変繁盛していたってぇはなしなんですがねぇ、舟で土手より上がるってぇルートができますってぇと、当然寂れてゆきますな。
荒物屋ってぇと、日用雑貨の専門店みてぇな店でして、件の太郎稲荷に近いってんで人通りも無く客がさっぱり入りませんな。
荒物屋の老婆は長年に渡って稲荷神社の世話してたのに加え、亭主が信心始めたってぇと、売れなかった草鞋が売れ始め、稲荷の奇跡で棚卸も在庫チェックも不要となり、草鞋を引っ張るだけで天井から「ぞろぞろ」っと新品が生えてくるってぇ運びとなりますな。
荒物屋の奇跡を知った髪床の主人が稲荷ににわか信心を始めるってぇと、髪床に行列ができるんですな。
で、主人が客の髭に剃刀を当てがって、すっと剃るってぇと、
「後から新しい髭がぞろぞろっと」
粋曲 ■ 柳家 小菊
小菊ねえさん、鳴り物が欲しかったようでしてねぇ、下座に向かって、
「ぼーん、て。ねぇ、ぼーんって入れて。・・・。もう、いい!」
なんてぇ、下座がぼんくらで鳴らずじまいでしたな。
かーわーいーいー。
五十は超えてらっしゃるんでしょうがねぇ。
小菊ねえさん、次のお座敷を押さえましたんで、次回は北沢でお会いしましょう。
主任 ■ 古今亭菊之丞 「百川 (ももかわ)」
落語の敷居の高さってぇと、「専門用語が多い」、「そんな職業今は無い=想像が働かない」なんてぇのが挙げられますな。
当演目の粗筋なんてぇこんなもんです。
いわゆる北関東出の百兵衛、葭町にある桂庵「千束屋」より浮世小路にある料亭「百川楼」での奉公と相成りまして、既に元結を下ろしちまった使用人に代わって用を訊くってんですがねぇ、二階の客人、河岸の若い衆から「四神剣の掛合い人」と間違われるってぇと、すれ違いゆき違いのやりとりの後、長谷川町三光新道に住まう常磐津師匠、歌女文字を迎えに遣らされるんですがねぇ、やはり間違えるってぇと、外科医師、鴨池玄林を呼んでしまうってぇ噺なんですな。
この内容を一度っきり聴いて理解するってぇのは無理な相談てなもんで。
韓国料理店を目指して、移動します。
(了)
投稿者 yoshimori : May 25, 2008 11:59 PM