自らを「~衛門」と名乗る男、デフォルトが笑い顔なので殺人事件を報道する原稿を読み上げたり、親類の葬儀で悔やみを述べるには大変不向きである。
各人の仕事量が各々の処理能力を超えてしまい、部内は騒然としているのだが、何から手を付けたらよいのか分からない上に、更に電話が鳴り止まないという負の連鎖状態。
全体性を持った構造体の関連性に疑念を抱いた瞬間から、個々の構成部分を切り離して改めて認識するのが肝要であるという。
「それはゲシュタルト崩壊ですね」
意味分かって言ってんのかね。
「こんがらがってんですよ、だから一度ほどいてみるんですよ」
まあそうなんだけどさ、今そんな概念みたいなこと言ってても何にも解決しないんだってば。
「まさにゲシュタルト崩壊」
状況の説明はいいんだってば。
「言ってて楽しくないですか、ゲシュタルト崩壊って」
何かいらいらしてきた。
「ほらー、口に出して言いましょうよ、ゲシュタルト崩壊」
・・・うるせぇってんだ!
「怒鳴らないでくださいよ、何も解決しないんですから」
もし、これ以上その単語を繰り返したら、ボールペンを手の甲に突き刺してやる。
「物騒な発言しますねー」
具体的な話しろってんだ。
「唄ってもいいですか?」
何を? ていうか、きみ誰?
「ほらー、ゲシュタルト崩、痛い!」
(了)
投稿者 yoshimori : May 28, 2008 11:59 PM