五月晦日、足元がお悪い様子で御座います。
この月に雨が降り出すってぇと、これが五月雨(さみだれ)かといえば、そうではないんですな。
旧暦五月ってぇのが今の六月ってんで、五月雨イコヲル梅雨ってなもんです。
大粒の雨が降り続いてる上に、出掛ける用も無いんでねぇ、こういう日には、上野動物園のランランと同年月日に亡くなった、六代目 三遊亭 圓生師匠の音源でも聴きましょうかねぇ。
「七人の子を生(な)すとも女に肌を許すな」
ってぇ言葉がありますな。
七人もガキこさえといて、なぁに言ってやがるなんてぇ思ったりもしますがねぇ、
「肌を許す」ってぇのは、「気を許す」ってぇ意味でしてねぇ、
要は「女は信用するな」ってぇ筋の噺ですな。
筋を述べるってぇと、
弟分の家で酒を飲んで酔って帰った男、女房と一緒にいた長屋の若い衆を間男と間違えて撲殺してしまうってぇと、死骸を隠そうと川へ棄てにゆく道中、弟分の男に遭ってしまいましてねぇ、遺骸を弟分の家の床下に埋めて隠したまま数年が経つってぇと、ある日女房と激しく諍いまして、大声で「人殺し!」と罵ったのを聴き付けた役人に夫婦共に連れてゆかれますってぇと、女房は若い衆を殺して床下に埋めたと全部話しちまいますがねぇ、いざ掘り出してみるってぇと、出てきたのは犬の骨ってんで、男は証拠不十分で無罪放免となりますな。
「だから言ったろ、兄貴、七人の子を生すとも女に肌を許すなってさ」
「おめぇの言う通りだ」
ひでぇ噺があったもんで。
圓生師匠、マクラでこうも言ってますねぇ。
「女ほど始末の悪いものはありませんな。
ちやほやすれば、増長する。
小言を言えば、膨れっ面をする。
理屈に詰まれば、めそめそ泣く。
打(ぶ)てば引っ掻く。
殺せば化けて出る。
だから女を殺した時には、よーく頭を潰しとかないと化けて出ますから」
七人の子を生すとも女に肌を許すな、『骨違い』の一席で御座いました。
(了)
投稿者 yoshimori : May 31, 2008 11:59 PM