午後から内科の診察を受けるという同僚、腹部を手で押さえながら、倒れるように前のめりで歩いてゆく。
が、社食にて彼のトレイに乗せられていたのは、盛りに盛られたセイロン風ドライカレー。
脂汗が出るほど胃が痛いって言ってたじゃん。
「だって、何か食べとかないと」
だからって、そんな刺激物。
「いくら無神経な僕でも全部は食べられませんよ」
そりゃそうだ。って自分で言うな。
「やっぱもったいないなあ。完食しないで夕方までもつかなあ」
もっとやわいのにすればいいものを、うどんとか。
「そうなんですけどね、カレーって食欲なくても食べられるじゃないですか、好きなんですよね」
分かったから、食べたら病院に行きなよ。
で、前述の内科へと向かう同僚。
彼を見送る、別部署の男。
「どうしたの、彼」
何か、胃が痛いらしいですよ。
「ヘリコバスターだ」
何ですと?
「いわゆるひとつのピロリ菌」
・・・ここの職場は胃腸が痛いって言うとすぐその名で呼ばれますね。
「僕のは本物だって。十二指腸、あれ? 二十四指腸?」
いやいやいや、増えてますよ。最初のでいいです。
「その何だ、十二指腸潰瘍になってさ、三万円払ってヘリコバスター・ピロリを駆除した」
へぇーそうなんですか大変でしたねー、なんて返して後でネットで検索したら、正確にはバスターではなく「ヘリコバクター・ピロリ」で、治療費も三万円は払い過ぎと判明。
何か伝えようとしているのは分かるのだが、結果として何ひとつ伝わってないこともあるのだ。
(了)
投稿者 yoshimori : June 26, 2008 10:15 PM