毘沙門天の向かい、料亭が立ち並ぶ石畳の路地ィ入るってぇと、火ィつけたらよく燃えそうな木造家屋がありましてねぇ、縄暖簾をくぐるってぇと、風鈴だけがBGMの非日常的空間があるんですな。
昭和12年創業
仄暗い店内の切り株な椅子に座るってぇと、頭の高さに菰樽が鎮座ましまし、囲炉裏の傍らには調度品のように佇むってぇ作務衣姿の店主が「燗にしますか?」なんてぇ、選択肢の無さを提示してくれてましてねぇ、幾ら涼しくなったとはいえ、初っ端から燗はあれでしょうと、冷やを頼みますな。
般若湯はってぇと、白鷹の上撰のみってんで、燗か冷やしか選べないんですな。
座ると黙って出てくるなんてぇ一汁四菜+αは以下の通りなんですな。
■枝豆 ・・・ 小さな笊に剥かれた豆が盛られる。
■玉子焼き ・・・ 甘さ控えめ。
■胡瓜の酢の物 ・・・ ポジション的には箸休め。
■磯海苔 ・・・ 歯ごたえに海月(くらげ)が入るという。
■豆腐と青菜の味噌汁 ・・・ 「もう帰れ」ってわけではない。
■乾燥納豆 ・・・ この塩加減だけで酒が飲める。
価格表示の無い品書きから頼んだ品は以下の通りなんですな。
■豆腐(冷奴) ・・・ 温奴もあるという。
■くさや ・・・ 風鈴が鳴り、風が通るとくさやも匂う。
どれも小鉢に小粋に盛られてましてねぇ、目でも愉しませるってぇ意図なんでしょうな。
四菜の但し書きが欲しい限りでしたねぇ。
つい漏れた笑い声がうっかりと響き、店主にたしなめられつつも白鷹を冷や、ぬる燗、熱燗で六合頂くってぇと、次の茶屋へと動きますな。
(了)
投稿者 yoshimori : August 25, 2008 11:59 PM