澁谷から副都心線なんてぇ開化な路線に乗りましてねぇ、急行だったら池袋まで三駅しか止まらねぇってんで、山手線に比ぶるってぇと、座れる上に早く着くしなんてぇ、大層重宝するんですなァ。
【第十一回 市馬・菊之丞二人会@池袋演芸場】
満席の為、舞台右袖付近の通路に体育座りでの鑑賞と相成ります
開口一番■柳亭 市丸 「寿限無」
市馬師匠の一門は必ずこれですな。
前座とはいえ、他にも聴かせて頂きたいンですがねぇ。
真打■古今亭 菊之丞 「真景累ケ淵~豊志賀の死」
「市馬師匠、実はまだ来ておりません。上野鈴本演芸場にて真打披露がありまして、市馬師匠の出番が終わってないという。なんてンで、あたしはつなぎといった次第で御座いまして」
菊之丞師匠の演るってぇ、女の嫉妬所作、視線具合がてェそう怪談ゝしてるンですなァ。
お仲入りで御座います。
トリ■柳亭 市馬 「御神酒徳利」
「うちの兄弟子、権太楼あにさん、こないだ競馬で大穴取ったらしいンです。で、とんかつ屋を貸切ったってぇ云うンですよ。まあ、とんかつ屋、ねぇ、まあ、たかが知れてますねぇ」
粗忽な二番番頭、奉公先の家宝である将軍下賜なんてぇ御神酒徳利を割れてはいけねぇとばかりに水瓶に沈めてそのまま失念てんで、店中は引っくり返した騒ぎになるってんですがねぇ、番頭の女房の入れ知恵で算盤占いと称して、無事に徳利は発見されるンですな。
この一件を見知った、上方は鴻池善衛門の支配人、主の娘の病を診て欲しいと番頭を連れて旅立ちましてねぇ、神奈川の宿は新羽にて薩摩藩士の金子が紛失した騒動に巻き込まれるってぇと、盗んだ女中が番頭の占いに恐れをなして告白、稲荷大明神の仕業として金子は見つかるンですな。
愈々上方へ着いた番頭、三七は二十一日の願掛けを行うんですがねぇ、元来神通力も何も無く、強運だけでたどり着いた鴻池の屋敷で奇跡、リアルに稲荷大明神が枕元に現れるってぇと、屋敷の地下に眠る観音像を掘り起こさせて祈れと託宣して消えまして、其の通りに致しますってぇと、娘は全快、善衛門からは謝礼と祝いとして金銀財宝を頂き、帰路に着くンですなァ。
「まァ、そうだッたのかィ、これもみンな神奈川の稲荷大明神様のお蔭だねぇ」
「なァに、嬶大明神のお蔭よゥ」
連日の痛飲が響いてきたてンで、偶にゃァまッつぐ帰りましょうかねぇ。
(了)
投稿者 yoshimori : September 27, 2008 11:59 PM