えェ、春は桜、夏涼み、秋芝居の冬炬燵なんて申しまして、昔はそれくらいしか愉しみが御座ィませんでしたな。
また、春浮気、夏は元気で秋塞ぎ、冬は陰気で暮がまごつきとも申しまして、まァ春はってぇと桜と浮気しかない淫靡な季節なんで御座ィますな。
「ひさしぶりじゃん」
ほんとだ。
「いつ以来?」
覚えてないな。あ、思い出した、君が愛人を連れて山に来た日以来かな。
「・・・そういうことは陰でこっそり言ってくれますか」
あー、ごめんごめん、気が利かなくて。
「(小声で)今日も来てるからさ」
何が? え? 山の愛人?
「山って。それも来てるけど、違う」
え? 本物? 彼女?
「いや、また別の」
すげェな、おい。全員集合させようぜ。
「みんな来るかなぁ」
・・・呼ぶ気でいやがる。
まァ、何で御座ィますな、お天道様が高ェ時分から、表で桜見ながらキチガイ水なんてがぶがぶ飲ってますってぇと、何でもどうでもよくなりますなァ。
三人妾の一席で御座ィます。
(了)
投稿者 yoshimori : March 29, 2009 11:59 PM