「バッテリ~、バッテリ~」
すごい売り声。
「へぇ、何にしやしょう。小さいのから大きいのまで取り揃えておりやす」
いや、ひとつも要らない。
「親方ァ、今なら同ンなじものがふたっつ付いてきやすよ」
いや、要らないから、ひとつも。
「おぅおぅおぅ、冷やかしなら止めてもらいてぇなァ」
いや、呼び止めてもないし。からまないで。
「旦那ァ、買ってくださいよ。これ持って売るのも辛ェんですよ。うちには年老いた母親と十二をカシラに三人の子どもが」
戦略変えてきた。
「もういいってんだ!」
何だなんだ。
「あっしがこれを持って地獄に堕ちればいいんだ!」
まァた、そういうことを。
「じゃァ買ってくださいよ」
んー、いくら?
「三万円」
えー? ていうかこれ、何のバッテリーなの?
「I○M」
いおむ?
「こりゃァ伏せ字だ!」
あー、やっぱ要らない。
ほんとに要らない。(実話)
(了)
投稿者 yoshimori : December 14, 2009 11:59 PM